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レクリエイターズ ネイキッド

5 may

5月13日

84/アリステリア「どういう事だ」

アリステリアが詰め寄る。

何もない白い空間。軍服の少女の創り出した、『森羅万象(ホロプシコン)』の能力で造り出された空間だ。

その真ん中の、ビロード張りの豪華なソファに座り、物憂げに話を聞いている軍服の少女。
アリステリア「其方の話では、私の世界を想像した神を捕獲し改変を迫れば、世界が変わると申されたが」
軍服の少女「その通り。君を謀る様な真似はしない」

どん、と高良田概を突き飛ばすアリステリア。ひ、か細い悲鳴を上げる高良田。
アリステリア「何も起きぬ」
アリステリア「全ての禍事(かじ)がこの男の仕業とするならば、世界を善きものに還すのもまた、この男無くしてあり得ぬ。それが『造物主』たる神の御業。そう、其処許(そこもと)は申したであろう、だが」
アリステリア「この男に、確かにその筆で我が世の改変をさせた。だが、何も起きぬ。あろう事か、我が世に帰還も出来ぬ。これでは何も、意味が無い」

軍服の少女、黙って聞いている。

アリステリア、イラだちを押し隠し。
アリステリア「私は、私の世界を戦乱から救わなければならぬのだ。ウンターヴェルトの軍勢を駆逐し、もう一度五大都市を奪還せねばならない。こんな場所で戯れている暇などない!」

高良田を見下ろし。
アリステリア「貴様の責任だ!! あの様な、炎獄の世界を創造し、あまつさえそれを慰みの演目にするなど……貴様は恥じぬのか! 私はお前の様な者に創造された事、慚愧に耐えぬ!!」

震え上がる高良田。

テラステーブルで拳銃を玩んでいるコートの中年男。目の前にはバーボンの瓶。

その中年男が、ぼそりと漏らす。
中年男「正義感を振りかざすのは良いがね。君の倫理観は、どうにも直線的だぞ」

ゆらりと立ち上がり。
中年男「もう少し楽しんでみたらどうだ、この世界を。面白い世界だぞ? 中々お目にかかれるものでもない。なあ、『軍服の姫君』よ」
アリステリア「其処許の如き者が口を挟むな、飲んだくれの卑陋(ひろう)めが!」
中年男「酷い云われ様だ。自分の娘にすら、そんな口を聞かれた事は無いんだが」

軍服の少女、椅子から立ち上がり。
軍服の少女「アリステリア殿。余は嘘を口にしていない」
軍服の少女「世界というのは存外頑丈でね。君の世界を改変したいなら、まず世界の土台たる『ここ』から揺さぶらねばならないのだな。手順はどの世でも必要だ」

怯える高良田を見やり。
軍服の少女「十分に揺さぶり、崩し、軋みを与えてから──その先にようやく、『造物主』の御業が冴えると言う訳さ」

軍服の少女、ふわりと椅子から降り。
軍服の少女「だから──この世界の常識を揺さぶって頂きたい、アリステリア。救うべき世界はそれをこそ望んでいる。だって君は、世界を救うのだろう?」

アリステリア、不快そうに眉根を寄せて。
アリステリア「勿論。私は世界を救う」

それを横で黙って聞いているまみか。
軍服の少女「されば良し。さて、世界を揺さぶる幾つかの方法だが」
軍服の少女「余と袂を割(わか)った『被造物』たちの話は君にもしている筈──彼等は臆病で、変革を受け入れぬ。自らの世界に対し果たすべき責任も、彼等は担うつもりが無い」
軍服の少女「まあ結構。彼等が自らの世界を救済したいかどうかは、それは彼等の裁量だ。だが──世界の安寧を得んが為、自らの意志で世界の鍵を手にした者達の願いを阻遏(そあつ)せんとするのは、さて、如何する」
アリステリア「我が民草の想いを、邪魔立てさせる訳にはいかぬ」

光と共に白銀の大槍が右手に現れる。
軍服の少女「そうあって頂ければ助かる。この世界の存在さえ知らぬまま使命の為に戦わざるを得ない者共に、標(しるし)の灯を灯(とも)し導くのが余の役割。この世界の神々に翻弄される者共は、創作の数だけいるのだからな。それに」

体育座りしているまみかに、一瞥をくれる軍服の少女。
軍服の少女「君の願いも、どっかできちんと成就させねばならぬだろうし」

まみか、少し思い詰めた様な、硬い表情で立ち上がり。
まみか「……、あの人達と、戦うことになるのかな」
軍服の少女「さて。彼等がその様に相対するのであれば、ただ立ち向かうのみ。違うかい? まみか」

まみかは目を合わさない。哀しげに目を伏せて、唇を噛み締める。
まみか「そう……そうだよね」

軍服の少女がふと立ち上がる。白い世界が当たり前の様に、朽ちたホールへ変わる。落ちた天井からは青い空が覗いている。
軍服の少女「そう、そういえば。また一人、この地へ現界する様だ。歓待の役目を君に頼みたいのだがな、白銀の騎士殿よ」
アリステリア「……承知致した。世界の御柱を揺るがす事が肝要であれば、担い手は多い程好し。道理である」
まみか「わたしも一緒に行く、アリスちゃん」

軍服の少女、諭す様に。
軍服の少女「私達は皆、皆世界の救済を願っている。その解決の路が拓けているにも拘わらず願いを無碍にする事は不徳の限り。諸氏は皆、己が世界の希望の星なのだから」

銃を玩ぶ中年男が低く笑う。「私も、仕事をした方がいいかな?」
軍服の少女「願わくば」

腰を上げる中年男。


85/颯太の自室。横には置かれているノート、落書き、いろいろな書き付け。

セレジアに言われた事を思い出す。
セレジア「大丈夫よ。キミの前には、まだとても多くの時間があるわ。だから、すこしずつやりなさい」

セレジアの言葉が響く。ボンヤリとため息をつくと、モニターのドローソフト上にある何かの落書きを消す。いらいらしながら書いては消し、書いては消し。どうにも集中出来ない中、最初の邂逅にあった軍服の少女の台詞が、唇が颯太の頭をよぎって離れない。
颯太「……」

ため息をついて、ドローソフトのウィンドウを消す。パソコン上ではいつものSNS。

ぼんやりと流れるウィンドウを見続ける颯太。

自分のページを見て、そこから評価を見る。大した評価も付いておらず、またへこむ颯太。ため息をつくと、ふと微笑む軍服の少女の表情を回想する。

颯太は思い出そうとする。過去の記憶をたぐろうとする。それは忘れようとして、押さえつけていた一年も前の記憶だ。
『彼女は、僕を知ってる』『僕もまた、──彼女を知ってる』
『だけど、どうしてだ? どうして僕は、彼女を知ってる? 僕は──?』

軍服の少女の微笑みが脳裏をよぎる。その微笑みは、ある女の子の笑みに被る。それはセツナの笑みだ。

彼女は──セツナは──ある星の名を名付けると、そう、メールに書いていたことを、颯太は閃光の様に思い出す。

せわしなく検索窓に星の名前を打ち込む颯太。googleの検索欄に流れる『アルタイル─わし座アルファ』。

キーワードが脳裏に、切れかけたネオンの様に瞬間、瞬く。
颯太M「『アルタイル』」

掲示板の書き込みが表示される。

「アルタイルの新作が」「アルタイル」という言葉を目にする。それも結構な数だ。

一瞬だけ、セツナのメールで表示された画面が頭をよぎる。

セツナの作った、「『アルタイル/world Étude』シマザキ・セツナ」の文字。

シマザキ・セツナ。

颯太にとっての、亡霊の様な名前。

ひくっ、と息を呑む颯太。
颯太「そんな……馬鹿な」

取り付かれた様にキーを叩く。

検索していくうちに「軍服」「サーベル」「ツインテの姫君」「新曲」というワード。どんどんとピースが埋まっていく事に戦慄を覚える颯太。

「今週の一位/pick up//アルタイル・RED SNOW Conceltato」と題されたPVを見つける。

それをクリックする颯太。

マウスの手が固まる。息を呑む颯太。

モニターを見ている颯太。やがて顔を覆い、深い息を吐く。

軍服の少女そのものが、そこに存在していた。
颯太「そんな……だから」
颯太「だから僕は覚えてたんだ……まさか……」

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