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レクリエイターズ ネイキッド

5 may

5月15日

89.2/タクシーとすれ違う様に歩道を歩く影。私服のまみかだ。手にはコンビニの袋を抱えている。
まみか「こんな夜中に、女の子ひとりで危ないよ」

そういって微笑む。

その視線の先には、高架下に設けられた公園で一人、野営している軽武装のアリステリア。

野営のため少しだけ武装を解き、キャンプの様に傍に積んである。

目の前には落ちていた石やブロックの破片を積んで作った竈(かまど)。小さな片手鍋(現実世界で手に入れたもの)で、お湯を沸かしている。

アリステリアはまみかに目を向ける。
アリステリア「其処許が来てくれたのなら、心配ないな」

まみか、苦笑して。
まみか「そんなこといって、もう」
アリステリア「冗談を言っているつもりはないぞ。実際の所、其処許の魔法は私の世界で見聞きしたどんな魔術よりも、簡便で強力だ」

まみか、傍にコンビニの袋を置く。
まみか「遠足みたいで楽しいけど、公園で煮炊きはまずいよう、アリスちゃん。だいたいこの木──」

見回すと、破壊されたベンチとブロック塀。

まみか、ため息をついて。
まみか「アリスちゃん、めっ」
アリステリア、少し困った様な顔をして。
アリステリア「あるものは使う」
まみか「もー……だめだよ、こういうの。公共のもの、なんだからね」

聞いてか聞かずか、ベンチの残骸を手で折ると、竃の中へと放り込むアリステリア。
アリステリア「其処許のいた場所は、この世界と似ているのか」
まみか「うん、だいたい一緒……かな。私のいた所も、同じ『東京』だったし」

まみかは周りを見回し。
まみか「……とは言っても」

汚いギャングめいたらくがき、不法に捨てられた粗大ゴミ、切れかけて点滅している蛍光灯、

そして街灯に貼られ寒風に晒されている、「特売戸建 四千五百六十万3LDK」と書かれた、色のあせた不動産屋のチラシ。

まみかは少し寂しそうに、体育座りの膝に顔を埋めてため息をつく。
まみか「……なんだかここには、戸惑っちゃうことも、多いけど」

少し流れる沈黙。まみかが感じる『現実』の違和感に、アリステリアは感良く気づいているかの様だ。
アリステリア「……」

火が爆ぜる音がする。
まみか「ねえ、姫君が言ってた、新しいひと。どこにいるんだろうね」
アリステリア「この界隈であることは間違いないと思うが……高台の向こうに川が見えた、あちらにも足を伸ばしてみるつもりだ」
まみか「どんな人かな」
アリステリア「頑丈で攻撃力が高ければ有難い」

まみか、苦笑して。
まみか「私は……いい人が来ると、いいな」

アリステリア、少し眉毛を上げてまみかを見やる。
アリステリア「いい人、か」

アリステリアは燃える薪を見つめながら呟く。
アリステリア「人格など問題にしないが──目的が異なる者とは共闘出来ぬ。軍は目的の為に意思統一をすべきだ」

同じ様に火を見つめながら独り言のように呟くまみか。
まみか「そうじゃないよ、アリスちゃん。いい人ならね、考え方が違っても、必ず私たちの、本当に強い味方になってくれる」
まみか「それは、ただ目的が正しいことよりも、ずっと大事。わたしはそう思う」

まみかの心に揺らぎはない。アリステリアはそのまみかを少し眺め、やがてふと笑う。
アリステリア「……私も至らぬな」
まみか「え?」

アリステリア、苦笑しながら。
アリステリア「まみか、其処許について、少し勘違いをしていた。──……そうか、其処許は、そうなのだな」
まみか「んー?」
アリステリア「其処許は、正しさの在り処を知っている」

アリステリアは、まみかに向けて笑顔を見せる。
まみか「よくわかんないけど、ひょっとして褒められてるかな? えへへ」

頭をかいて照れると、あわてて照れ隠しのようにコンビニ袋をまさぐる。
まみか「そうだ、お腹減ったよね? こんなの買ってきたんだよ」

まみかは持っていた持ち手つきの紙袋から、箱を取り出す。

見れば、まみかのカレーは、「マジカルスレイヤー・まみか」カレーの甘口。
アリステリア「其処許だ。なるほど」

アリステリア、少し憮然としながら。
アリステリア「私達はやはり、あの姫君の言った通り『物語の登場人物』なのだな」

茹った鍋にレトルトのカレーを入れ込み、枝を差し渡した上にレトルトのご飯パックを乗せるアリステリア。
まみか「でも見かけたら、ちょっと嬉しくなって、つい買ってきちゃった。他にもあるよ」

飲み物やプリンといった甘味、スナック類をいくつか取り出すまみか。

アリステリア、まみかのまるめたコンビニ袋を取り上げると丁寧に畳み、まみかに手渡す。
まみか「ん?」

まみか、捨てるもの(ゴミ)だと思っていたので、ちょっと当惑。
アリステリア「いらぬのなら、私がもらうぞ。よくできた袋だ」

がさがさとしまい込むアリステリア。

まみかがくすりと笑う。
まみか「アリスちゃんって、なんだかおばあちゃんみたいだよね。ふふふ」

アリステリア、少し顔を赤くして気まずそうに。
アリステリア「……これとて、なにかに使えよう」

まみかに「なにかって、何に?」

アリステリア、憮然としながら恥ずかしげに返答する。
アリステリア「なにかは、なにかだ」
アリステリア「それにだ。いくらまみかでも、母上というならまだしも、おばあちゃんという言い草は、ないぞ」

とぷりぷり怒りながら、カレーを自前の皿にあける。

それを見たまみか、「あれ?」と辺りを見回す。
まみか「そうだ、お皿買ってくるの忘れちゃった!」

アリステリア、持っていた皿を差し出す。
アリステリア「其処許が先に食べろ。私は、あとでいい」
まみか「一緒に食べるから、おいしいんだよ、アリスちゃん」

まみか、カレーをスプーンですくうとアリステリアに差し出す。
まみか「はいアリスちゃん、あーん」

アリステリア、驚いて顔を赤くする。
アリステリア「馬鹿者、わ、わたしは、子供ではないぞ」
まみか「あーん」
アリステリア「……」

まみかが引かないのを見て、仕方なくその匙を銜えるアリステリア。
まみか「ね、おいしいでしょ?」

と言って自分もひとすくいカレーを口に頬張る。
まみか「ん、すっごいおいしい! やっぱり、一緒に食べるからだよ」

スプーンを置いて。
まみか「新しく来る人も……こうやって、カレーを一緒に食べられる様な人だといいね、アリスちゃん」

アリステリア、優しくまみかを見遣る。
アリステリア「そうだな」

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