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レクリエイターズ ネイキッド

6 june

 

6月4日

124/アリステリア、僅かに不安を感じて語りかける。
アリステリア「まみか」

まみか、何かを言おうとしたアリステリアの言葉を遮るかの様に。
まみか「ねえ、アリスちゃん」
まみか「私は、アリスちゃんの事が大好きだよ」

微笑んで手を握るまみか。それはとても美しい表情だ。

その小さな手を握り返すアリステリア。
アリステリア「ああ」
まみか「それだけ、ちゃんと言っておかなきゃって、思ったの」

立ち上がるまみか。

アリステリアは不安に心を動揺させる。
アリステリア「まみか……何をするつもりだ、私も──」

立ち去ろうとするまみか。
まみか「まだ駄目。でも─―私がアリスちゃんを信じている様に──この先に何があっても、私を信じて欲しい」

まみか、屋上から跳躍して、光に包まれて消える。
アリステリア「まみか!」

125/伽藍の廃墟。ソファで、物憂げに考えているアルタイル。

まみかが、そっと大広間に歩みいる。アルタイルの後ろに立つ。他には誰もいない。

まみか、黙って立ち尽くしている。顔には険しい決意の色が浮かんでいる。
まみか「どうしてもあなたに、聞いておかなきゃいけない事があったから」

振り向きもせずにソファに佇むアルタイル。
まみか「……私、ずっと考えてた。あなたが嘘をついてるのか、それともあっちの人達が嘘をついてるのか」

アルタイルは振り向かない。ただ黙ってまみかの独白を聞いている。
まみか「でも」
まみか「この世界に神様がいるのは本当。神様が私たちの世界を変えられるのも、きっと本当。でも──とても重要な事を、あなたは黙っていた」

アルタイル、答えない。まみかも静かに問いつめる。

この世界に来て、まみかもまた『キャラクター』から離れ、一人の人格として独立し始めた。今のまみかはまるで、歳を急に重ねたかの様な雰囲気を携えている。
まみか「世界の軛を揺さぶって、創造の力を大きくする事なんて出来ない。もし創造の力が何かを変えられるとしたら、見ている人達が、『一緒に想う心』だけ。世界を揺さぶる事は、ただ、ぶつかり合った世界の歪みを大きくしていくだけ。そうよね」
まみか「───『アルタイル』、さん」

無言で立ち上がるアルタイル。まだまみかに顔は向けない、背けたままだ。
アルタイル「遂にその名を知ったのか、まみか」

まみかは動じない。言葉を続ける。
まみか「……教えて貰った。あなたが「敵」といってる人達の一人から。だから私は、ここに来た」
まみか「あなたが、この世界を壊そうとするなら……私はあなたを、止めなきゃいけない。わたしは『マジカルスレイヤー・まみか』だから」
まみか「わたしは、私が愛する物語の『主人公』だから」

アルタイル、立ったまま、まだ表情を見せようとしない。
アルタイル「なぜ、黙って彼らの側に付かなかった」

まみか、強い意志で微笑んで。
まみか「それは、お友達を汚す行為だもの。アルタイルさんだって、私の大事なお友達。だから──」
まみか「わたしは、あなたを助けたい」

感情を感じさせない目が、大きな騎兵帽の隙間からまみかをねめつける。
まみか「これはあなたの──復讐、なんだよね」

アルタイルの目が、凛とした澄んだ瞳から、黒く濁って行く。先程まで見せていた無関心にも見える物倦げな態度が、まるで霜が張る様に、じわりと冷徹な悪意に置き換わっていく。
まみか「あなたが愛した……あなたを愛してる神様との約束。でもそれが復讐なんて、寂し過ぎる」
まみか「あなたの神様と、あなたを繋げてくれたこの世界を、復讐なんかで終わらせてしまうなんて、そんな終わりは……寂し過ぎるよ」

アルタイル、長いため息をつく。そしてくるり、と振り向くと、口元に歪んだ笑いを浮かべ、それは傷の様に醜く引きつっている。

妙に晴れやかだが静かな、朗とした声で喋りだす。
アルタイル「余は」
アルタイル「君達が嫌いだ。君達の物語が嫌いだ。君たちを生み出した忌まわしき神々には反吐が出る。糞下らない物語を垂れ流す、この世界総てが不快だ」

張り付いた様な笑いは消えない。
アルタイル「余の盟友を、この世界は拒絶した。それはとても小さな事で良かった。決して大それた望みではなかった。ただ、我が盟友は居場所があればそれで良かったのだ。しかし」
アルタイル「彼女を侮辱し、彼女の存在を黙殺した。唾をかけあざ笑った。無き物として扱った。彼らにとって簡単な話である様に、私にとっても簡単な話だ。余は、君たちを含む総てを倒す。倒して倒して、総てがこの世から消え失せるまで倒す」
アルタイル「これこそが、余が今ここに立つ理由だ。余は成し遂げねばならない」
まみか「なぜ? それは彼女があなたに与えた只の『物語』じゃないの!? あなたを縛る『物語』じゃないの!?


アルタイル「君はどうだ? 愚劣な偽善者の仮面を、物語の軛から解き放たれて尚、身に付けている君が?」
まみか「……違うよ。私は確かにそういう『主人公』だった。でも、この世界へ来て……どんな人にもなれる、どんな生き方でも出来る、と」

強い眼差しで。
まみか「その上でもう一度、私はもう一度この生き方を選んだんだよ」
まみか「ここへ来て、色んなものを見て。アリスちゃんやあなたと出会って。私はもう一度『マジカルスレイヤー・まみか』になろうと、そう決めた」

アルタイル、微動だにせず口元だけを動かす。その姿は幽鬼の様だ。
アルタイル「余もそうだ──筋書き如きに忠義を尽くしているのではない」
アルタイル「この世に打ち捨てられた彼女。そのような役割を彼女に振った、無慈悲な物語こそを余は決して許さない。筋書きなどではない、余が決めた事だ」

まみか、黙って聞いている。
まみか「聞いたよ、その子に何が起きたかも。それはひどい事だった」

拳を握って。
まみか「でも……あなたの悲しみは、わたしが受け止めてみせる。私たちは皆、元の世界で、苦しみや悲しみを抱きしめて来たんだもの。あなたの悲しみだって、きっと受け止めてみせる」
まみか「私は救ってあげたい──あなたの魂、そして」
まみか「セツナちゃんの魂を」


それを聞いた瞬間、アルタイルの目が見開かれる。獣の様な、憎しみだけが渦巻く感情の読み取れない瞳に変わる。

サーベルが唸りを上げてまみかの背中に突き立ち、胸を突き破る。一瞬、噴水の様にばしゃり、と湧き出る鮮血。

がっは、と血を吐いて前につんのめるまみか。よろけ、前に踏み出す。
まみか「……なっ……ん、で」

二本目のサーベルが、ずんと横からまみかに突き刺さる。再び口から大量に喀血(かっけつ)するまみか。
アルタイル「知った様な、ことを」

掠れた、老人の様な声。
アルタイル「貴様に何が解る。彼女の無念の何が解る。慟哭の、怨嗟の、何が解る。一体、何、が、解、る」

錆び付いて震える声が、静かに響く。

それまでの理知的な仮面を脱ぎ捨て、剥き出しの憎悪を隠さずに襲いかかるアルタイル。

サーベルが宙を舞う中。空間がドットの様に歪み、剣が幾振りもその手に滑り落ちて来る。

まみかを再び襲うサーベル。それをステッキで弾き返す。周囲を衛星の様にサーベルが飛び交う中、更に剣を両手に二本ずつ構え、飛び込むアルタイル。

激しい攻防戦。しかしまみかはもはや瀕死だ。心臓の鼓動と同時に鮮血が体外に迸る。

最後の力を振り絞って、叫ぶまみか。
まみか「マ……ジカル・スプラッシュ・フレアアアアアアアアアアッ!!!!!」

最大級の魔法が炸裂し、目の前で光が爆縮して再び大爆発を起こす。アルタイルの身体が千切れて一度消し飛ぶが、バグの様な粒子が身体を包んだかと思うと、再び再構成される。そこには勝ち誇った様な、狂気のアルタイルの表情が浮かぶ。横薙ぎにまみかの立っている場所へと総ての剣とサーベルが襲う。
アルタイル「ぁああああああああああッ」

轟音と吹きすさぶ爆風。瓦礫。伽藍の廃墟の中には、まみかの立っていた場所には、ただ無数の剣が突き刺さっている。

激しい吐息を轟々と吐いて、血の跡を獣の目で見上げるアルタイル。

血の跡が伽藍の砕けた天井へと繋がっている。

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