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レクリエイターズ ネイキッド

6 june

6月15日

136/大きな駐車場。閉店したスーパー。深夜。人は誰も居ない。

辺りを見回す颯太。

喪服の様な制服に戻った真鍳が暗闇から水銀灯の灯りの下へ、ゆらり、と現れる。白い顔は笑っているが、まるで幽霊の様だ。
真鍳「おっ、時間通り。時間に正確なオトコノコって、女子の好感度たかいんだよう?」

打って変わり、葬式帰りの様な表情の颯太。
真鍳「オンナノコと深夜のお忍びデート、なにかワクワクドキドキする事、起きる予感がしないかな? しないかな?」
颯太「……僕に、何の用」

真鍳、笑う。水銀灯に照らされた青白い顔を、妙に艶やかな笑顔が覆う。
真鍳「うーん、焦る男は嫌われるよう。ま、そうだね、なんか奢ってくんない?」

自販機からおちるジュース。ドリンクに口をつける真鍳。一息でごくごくと呑むとぷっはあ! と、うまそうに息をつく。向かいで不振そうに彼女を見つめる颯太。
真鍳「この世界はいいねえ。ご飯もおいしい飲み物もサイコー、お空も鮮やか空気も爽やか、おまけにみんな馬鹿ばっかりで!」
真鍳「サカガミ君もいないしね。あ、私の事知ってるならサカガミくんも知ってるよね?私のオハナシの主人公。まあ、彼の鬱陶しい事うっとうしい事。ああいうのが居ないでのびのびとやれんのが、健康にも精神にも一番いいって事だよねえ、うんうん、メンタルヘルス、大事だよ!」
颯太「……」

黙って聞いている颯太に少し怒ったそぶりの真鍳。しかしそれもまた、本心には見えない嘘くさい仕草だ。ちちち、と指を左右に振って。
真鍳「だーめ、だめだめ、合いの手くらいは入れてくれなきゃ。辛気くさいじゃん。心配し過ぎかな、ソウタくんはさあ」

わざとらしく、指をないしょの形にかざす真鍳。目を細めて笑う。
真鍳「ぜえーったいに、誰にも言わないから。君が殺した誰かの事なんて」

颯太、たじろぐ。
颯太「違う!! 僕は、ぼくは殺してなんか!」
真鍳「そうかな? どうかな?」

真鍳、目を細めて。
真鍳「隠し事ってさ。一番クリティカルな所を避けて、周りのディテールだけは固めて喋るんだよね、判で押したみたいに」

指をクルクルと回し。
真鍳「でもさ、それって、どこのピースが欠けてるのか、教えてる様なものなんだな、私みたいな嘘吐きから見るとねえ。そしたらね」
真鍳「欠けてるピースの形が解っちゃうんだよう、ソウタくん?」

颯太をじっと見る真鍳、顔は相変わらずうっすらと吟味する様に笑っている。
真鍳「ほんじゃま、君の欠けてるピースの説明しよっか。それは、『謝りたいのに、謝れない』。そこなんだよねえ?」

眉を顰めて真鍳を見る颯太。

回想のメテオラ。
メテオラ「『許されたいのなら、採るべき路は一つ。その方を超え、その方の力になる事です』」

颯太、耐える様に俯くというシーン。

口調は妙に理知的な喋り方だが、講義をする様に腕を振りながら、陶酔する様に喋り始める真鍳。
真鍳「言ってる事が気に食わない、謝りたくない。意に沿わない時ってのはねえ、人は必ず動作に出るんだな。肩に力が入る。目を逸らさない。でも君、そうじゃなかったねえ」
真鍳「次。じゃあ何が? したくないんじゃない、したくても出来ない。次。出来ないなら、その相手が会えない、いない。呵責を覚えてる必要があるなら、会えない原因を作ったのはキミだよね。つまりこういう事、能動的にキミが関わった何かで、彼女には会えなくなった。物理的に。そしてこの件に関わってて、メテオラちゃんが必要としている誰かだからこそ、キミは彼女に相談したんだよ。メテオラちゃんに隠し事をしたくない。けど、死んでも話す訳にはいかない、何かを伝える為にねえ。くふふふふふふ」

一旦話を切って、薄笑いを浮かべて颯太の顔を覗き込む真鍳。
真鍳「ぐじゃぐじゃした云い訳を逆算するだけで、どれが正解のピースかなんて、大体解っちゃうんだよね」

キスするかのように、ほっぺたに唇を付けて喋る真鍳。声は溌剌とした声から、妙に湿ったささやき声に変わっている。
真鍳「ソウタきゅん、私は嘘吐きだからだねえ、隠し事する気持ちってやつ、それはもうそれはもう、真昼の電柱みたいにさ、よおく見えるんだよう」

憔悴した顔で真鍳を見やる颯太。
真鍳「ま、じゃ本題に入ろうか。私は、キミにメッセンジャーを頼みたいのだね、うっふふふふ!」

憔悴した颯太、腑抜けた口調で聞き返す。
颯太「メッセン……ジャー?」
真鍳「そうそうそ。まーなんというか、セレジアっているじゃない、君ん所の側の、あのおねーさん。彼女にさあ、メテオラちゃんこそが敵の内通者だよって、そう伝えて欲しいんだよね」
颯太「何を──……」
真鍳「あのメテオラって子だよ? あの子が『アルタイル』と組んで、八百長試合を目論んでるって、そう伝えて欲しいんだな、マガネちゃんは」

当たり前の様な顔で答える真鍳。
颯太「どうして君が、アルタイルの名前を──……」
真鍳「まえも言ったじゃーん。マガネちゃんは、何でもかんでもお見通しなのだ、くふふふふ」

颯太、真鍳の陰謀の真意が掴めずに動揺する。
颯太「そんな事……! そんな嘘を吐いて、何をさせるつもりなんだよ!」
真鍳、つまらなさそうに眉を寄せると、頭の悪い子供に諭す様な口調で。
真鍳「ウソでもホントでもどっちでもいいじゃん、君にとっては。私はただ、君にそうして貰いたいだけなのだね。んで、君には黙ってて欲しい事がある訳でしょー。両者、完全に利害が一致してるんだけども、どっか問題?」
颯太「そんなバカな事、誰も信じない」

真鍳、楽しそうに口角をゆがめると、胸元から何かを取り出す。
真鍳「うんん? そうかなあ? んーと、じゃあ証拠を一つ、出しておこっか」

黒く乾いた血がこびりついた、まみかのリボンだ。

真鍳は目を細めると、嬉しそうに囁く。
真鍳「『秘密を知ったまみかちゃんは、真実を聞き出そうとしてメテオラに会い、そこでまさかの一撃死!』とかどうかな? うっふっふ?」

颯太、目を見張る。
颯太「え……?」
颯太「まみかちゃんが……死んだ?」
真鍳「そーだよ? いやあ、死んだ死んだ。すっごい血が出てたよお、あんなに小さな身体なのに、人ってのは随分と、血液が入ってるもんなんだねえ。それに──……」
真鍳「アリステリア? だったっけかな? あのぼんくら熱血ナイトも知ってるよお。嘘だと思うならあの子にも聞いてご覧よごらんよ、まみかちゃんを殺したのはだーれだ、ってね!? 彼女は頭にブチギレマークで『メテオラだ』って答えてくれるとおもうなあ、私としてはね!」
颯太「アリステリアに何を言った! まみかを殺したのか! お前が彼女を!!


大袈裟に驚く真鍳。
真鍳「おりょりょ、わたしが? いやいや、まっさかまさか。ぼんくら騎士ちゃんには本当の事しか言ってないよう? それに殺したって? どうして私がそんな事しなきゃ、いけないのかな?」
颯太「嘘だ、お前の言ってる事は全部嘘だ!」

真鍳、ひらひらと手を振って笑う。
真鍳「ほうー、なるほどなるほどん。いやはやその通り、マガネちゃんは嘘しか吐かないよ、どんな時でも言う事は全部ウソ。よっく知ってますねえ」

くすくすと笑う真鍳。
真鍳「さあて問題。……だとしたら、この台詞も嘘かな? どうだろうかな?」

颯太、うっと詰まる。
真鍳「どっからホントで何が嘘? 君にはまるで、解ってないよね。正しさ。真実。どっかにあるのかな? んん、あるんじゃないよ、そういうものは作るんだよう?」

にいっ、と笑って指を指す。
真鍳「キミ達、神様がやってるようにねえ。言ってみれば私達、みいんな嘘吐きの仲間って事かな、うっくっくくく!」
真鍳「起きた事実は一個だけ。だけど真実の方はね、いっくらでもどうにでも、なるものなのだねえこれが。真実なんていつだって、自分に都合がいいものを、一つ選べばそれでいい。そこで大事なのはねソウタくん? 自分で選んだものすら、最後まで信じない事なんだよう。だってだって、それは結局、自分についてる嘘なんだからねえ。自分に付いた嘘で死ぬなんて、バッカばかしい事この上ない、嘘は他人を騙してなんぼ! というわけで、マガネちゃんのハイパー人生訓、覚えておくとあとあと役に立つと思うんだな、うっふっふ!」

にまあ、と笑って指をスナップする真鍳。
真鍳「やあ、本当に人は複雑。嘘だったり本当だったり、それはくるりと裏返る。だから私は人が好きなんだなあ。うん、愛してるよ、ホントに。弄りがいのある、最強の面白グッズ! 神様ありがとうって、日々感謝だね!」

颯太に向けた笑顔がふと無表情になって。
真鍳「ま、あたしの神様は、根性なくて死んじゃったけど。バーカ」
ふたたびニカっ! と笑う真鍳。

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