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7 july

7月8日

7月8日

   

158/高良田「ひいいいいいいい!!!!」


天馬に乗るアリステリア、ベルリヒンゲンの篭手を付けた片腕で高良田の片足を掴み、高良田を中空に吊るしている。
高良田「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! やめて! やめて!!」


アリステリア「このような腑抜けに生み出されていたとはな。忸怩たる事だ」

呆れた様に高良田を眺めやるアリステリア。
アリステリア「『造物主』。私の質問に答えろ」
高良田「なっ! なんでしょーか!」

アリステリア、眼下に広がる夜景を見る。
アリステリア「お前が創造した、私の世界は──」
アリステリア「お前にとっても、愛しき世界か」
高良田「は?」

アリステリアは高良田を見遣る。
アリステリア「お前は私の世界を、救うつもりがあるのか。そう訊いている」
高良田「お、お、お前の世界を救うのは俺じゃない、......お前次第だ。お前にしか、あの世界は救えない」
アリステリア「何故だ」
高良田「だ、だって、お前、主人公じゃんよ」
アリステリア「主人公という肩書は、万能という訳か? 神のお墨付きと解釈していいのか?」

アリステリア、高良田を上へ放り投げると、もう一度胸ぐらを掴んでキャッチする。悲鳴を上げる高良田。
高良田「そ、そういう事じゃない! 言ってもわかんねーかもしんねーけどな、主人公だからじゃない、誰も辿り着けない所へ辿り着こうとするから、そいつは主人公になれるんだよ!」
アリステリア「ほう」
高良田「だから......だから、お前次第だって言ったんだ。俺が都合良く助けてやる事なんて出来ない、お前が闘って、お前が解決してくれなきゃ、あの世界はどーしょーも出来ねえんだ! 俺が出来るのは、帳尻を合わす事だけだって!」

アリステリア、少し頷くと再び口を開く。
アリステリア「......もう一つ聞く」
アリステリア「私はこの世界で、わたしの物語を読んでいた少年と会った。お前の作品は──煉獄煮え立つ私の世界は──不幸な物語だが、同時にこの世界の者達に力と勇気と、正義の有り様を教える物語だと。彼はそう語った」
アリステリア「改めて貴様に聞く。私の物語は、力と勇気を語る世界か? 私が血を流し、この身を捧げて正義に尽くすに、値する世界か」

高良田、ごにょごにょと口ごもりながら。
高良田「た、多分」
アリステリア「たぶん?」

高良田は頭をぶんぶんと振り、喚く。
高良田「知らねえよ! そんな恥ずかしい事自分で言えるか、バカみたいじゃねーか!!


アリステリア「思う事があるなら言え。私とお前以外に聞く者はおらぬ。そして私はお前の、恥ずかしい物語の主人公だ」

癇癪を起こしたかの様に顔を真っ赤にして叫ぶ高良田。
高良田「わかったよ! 値する! そのつもりで描いてるに決まってるだろうが!! じゃなきゃ、こんな話描かねーよ!」
アリステリア「そうか」

片手で高良田を振り、悲鳴を上げる高良田を馬の後ろに乗せる。急展開に何が起こったのか解らない高良田。
アリステリア「あの少年に感謝しろ」
高良田「え?」
アリステリア「帰してやる。私が総ての大団円を迎えるまで、好きに描きなぐれ」

疾走を始める天馬。アリステリアにしがみつく高良田。
高良田「言われなくてもそうするよ、あと怖いのは打ち切りだけだ」

馬を走らせながら、高良田に振り向く。
アリステリア「打ち切り?」
高良田「ああ、面白くないと読者が思ったら、それが途中でもその作品は終わっちまうんだ。そういう仕組みを打ち切りって言うんだよ」
アリステリア「そうか。うんと面白いものを、死ぬ気で描け」

すげなく当たり前の様に言うアリステリア。
高良田「お前、しれっと簡単に言うな! それが正義の騎士の台詞かよ!」

アリステリア、高良田を見遣ると力強く微笑む。
アリステリア「勿論だ。あの少年の様な読者が私を信じている限り、お前はやり遂げる」

眩しい笑顔を向けられて面食らうが、つられて気弱な笑顔になる高良田。
高良田「ああ、そうか......アリステリアはそういう笑い方も出来るんだよな、忘れてた」

二人は笑う。
高良田「で、ちょっと思ったんだが、今の話。俺とお前、どっちが先なんだ?」
アリステリア「どちらでも一緒さ」

ふと考える高良田。アリステリアがどう振る舞うかが気になったのだ。
高良田「あのさ」
高良田「お前、俺を解放して......これからどうすんだ」

アリステリア、再び顔を引き締めると。
アリステリア「......お前が作者なら、どうするかは判るだろう」

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