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レクリエイターズ ネイキッド

7 july

7月14日

163/黙々と自分用の机でライトテーブルに向かって絵を書いている駿河。
駿河「うちら、みんな自分主義やし。おたくらみたいに共同作業に慣れてへんし……そもそも書きたいもん、目指すもんが皆違う。こんな無理矢理、同方向に向けられてもやね、足並みなんぞ揃えへんよ」

眉をしかめて駿河を見る中乃鐘。
中乃鐘「とはいいますけどね、阿呆みたいな話ですけど、これに世界の存亡掛かってるって、菊地原さんも仰ってたじゃないですか」
駿河「……あー。うん。でも、それとこれは関係あれへん」
中乃鐘「関係ないって。世界ですよ」
駿河「そない何遍も言わんでも、解ってます。でも、世界がどうかなるから云うても、そんなのはうちらの描くもの、描く事、には欠片も関係あれへん、ちゅう事です」
中乃鐘も段々とテンションを上げて行く。
中乃鐘「僕も名前出して作品出してる物書きですけどね、それはどうかと思いますよ。周りの都合無視って、仕事じゃないでしょ、それ」
中乃鐘「そこをどうにか折り合いつけていくのが、仕事でしょう?」
八頭司「仕事っつっても、只のリーサラ物書き屋じゃねえか、お前」

中乃鐘、失礼な事を言われ創作者としての僅かの引け目に触れたことで、珍しく攻撃的に返す。
中乃鐘「違うでしょ。給料だろうが印税だろうが、対価もらってんですから。僕はお金もらうんだったら、しっかりやりましょうよ、と言ってるだけなんですけど。しかも今回は、間に合わせなきゃいけない切実な理由だって、ちゃーんとあるんですから」

普段はおとなしい中乃鐘の思いがけない反論に、少しイラつきながら言葉を返す八頭司。
八頭司「あのよ、あんたらと違ってさあ、こっちは成果がでなきゃ、一銭も入ってこないどころかマイナスなの。根本的に、取り組み方違うんだって」
中乃鐘「いや、それおかしいですよ。あのー、恐縮ですけど、ちゃんと間に合わせてない段階で、あなたのマイナス人に背負わせてるって分かりません? そうやってマイナス背負わせてる編集さんなり誰なりがいるからこそ、あなた、売れてるわけですよね」

八頭司、イラっとした表情を崩さずに椅子から起き上がり。
八頭司「てめーな」

松原が割って入る。
松原「すまん! 俺が悪かった! 悪かったよ!! わかった!!


両者をなだめて、もう一度椅子に座って溜め息をつく松原。
八頭司「下らねえ」

八頭司、黙って部屋を出ていく。その時に丸めた紙を拾っていく。

ばん、と音を立ててドアを閉める八頭司。


164/残された中乃鐘、松原、颯太。居住まい悪そうに颯太はもじもじし、中乃鐘も珍しく不快そうな顔を隠さない。ただ駿河だけが、無心で絵を描き続けている。

やがて溜め息をつき、椅子にずるずると沈み込む松原。
松原「菊地原さんが言ってたろ、メテオラ達が身体を張って時間をひねり出してるって。それは解ってるし、俺らだって遊んでるつもりはないよ」

中乃鐘に向き合って疲れた様に言う松原。
松原「ただ……メテオラさんの言ってた『承認力』の問題がさ、あるだろ」
松原「テキトーにやっつけて、『承認力』が発動出来なきゃ全部が無意味になる。そんな事は避けたいから、ギリギリまで努力はしたいんだ」
中乃鐘「それは解りますよ。この問題には、僕だって悩んでますから。でも、松原さんにこんな言い方したくないですけど……これが間に合わなかったら、悩んだ甲斐もなく終了じゃないですか。それだって無意味です」

中乃鐘、いつになく真面目な顔で。
中乃鐘「世界を救う救わない以前に、僕、関係した人が報われないのは、嫌です」

居たたまれなくなった颯太。
颯太「あ、あの、なんか飲み物でも、持ってきます」

その声に答えず、むっつりして黙っている三者。

困り果てて部屋を出て行く颯太。


165/外の通路に出て、中でのクリエイター同士のバチバチした空気を振り払おうとする颯太。溜め息をつき、自販機の前の休憩所を見ると、そこで座り込んでいるまりねの姿がある。
颯太「あ、まりねさ──」

まりねが振り向く。少し目が腫れている。

は、と足を止める颯太。
まりね「あ、颯太さん」

少し涙を拭って笑う。
まりね「まだみんな、ケンカしてました?」
颯太「ええ……まあ。あの、まりねさん、その……」

まりね、困った様に笑って。
まりね「ああ、ごめんなさい、えへへ」

笑いながら、慌てて手を振るまりね。
まりね「あの、違うんです。みなさんのケンカが原因じゃ……」

声が小さくなる。

一瞬の回想。駿河とまりね。
まりね「駿河さん、すごいなあって」


166/トイレ。洗面台の前。

丸めた紙をもう一度開く。もう一度読む八頭司。
八頭司「くっそ」

悔しそうに顔を歪める八頭司。
八頭司「追加したのか……だな、あのおっさん、正解だわ」

ボールペンを取り出して、そこに書き込む。

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