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7 july

7月17日

7月17日

   

172/シマザキセツナと颯太の回想。
颯太「あの頃、僕にはあまり友達がいませんでした。いや、話をする人がいなかったわけじゃないんです。でも、同じ物を見て一緒に喜んだり笑ったりする人が、回りにはいなかった......。そういう意味です」


回想。自室でキーを叩く颯太。SNS。他愛もない話題。日々の珍事件や、新番組のアニメの話。

その中でいつもの様に、描き上げたイラストを上げる颯太。クリック。「イイネ!」欄はいつも極僅か。

しかしふと、隅の送信が『NEW!』が点滅していることに気づく。


『コメント/セツナ/素敵です。こんな雰囲気で描かれたセレジアを、初めて見ました』

じわりとこみ上げる笑みを抑えて、キーを打ち返信をする颯太。


「コメント/颯太/嬉しいです、ありがとう」


そう言いながらコメント元の名前を見る。『セツナ』と描かれたHN。そこにカーソルを合わせると反転する。

その場所を開いてみる颯太。そこに広がる、華やかなセツナのページ。驚く颯太。

再び笑みをこぼす颯太。彼女に認めてもらったことが、嬉しくてたまらない。
颯太「この人の絵、見たことある、......そうだったんだ......」


172.1/颯太M「僕はセツナさんの絵が好きだったし、あの子もなぜか、僕の絵を気に入ってくれたみたいで......。僕らはアドレスを交換し、互いにやり取りが始まりました」


(書き込み)「(颯太)音楽も、動画も、自分で作ったんですか?」


(書き込み)「(セツナ)見よう見まねだけど、一生懸命やってみました」


セツナの新作をみる。素晴らしい絵。曲が鳴り出し、可愛いキャラがflashで踊り出す。


172.2/颯太「先に住んでいる所を聞いたのはどっちだったか、もう覚えてない。あの子の方だった気もするけど、記憶はいつも、都合がいいものを選び取ろうとする」


回想。セツナのメッセージ。LINE。


(書き込み)「(セツナ)今度の十四日、『ニコニコ大会議』やるんです。SNSの大きなお祭りです」


(書き込み)「(セツナ)メガロスフィアのクリエイターさんが来るんです。すごい行ってみたいんですけど、一緒に行けるような人がまわりにいなくて。もしよろしければ、一緒に行ってみませんか?」


は、と吐息を吐く颯太。頭を掻いて、混乱した思考を整理しようとする。
颯太「ど、どうしよう」

口元を両手で押さえ、ため息をつく。それは残念なため息では、決してない。

打ち返す颯太の手。


(書き込み)「(颯太)僕も行ってみたいです! 待ち合わせはどこの駅がいいですか?」


172.3/回想。新宿駅改札前、構内。待ち合わせの場所。

颯太「あ、僕です。どうも、ええ......今改札前なんですけど......」

話しながらキョロキョロと辺りを見回す颯太。

雑踏の中、同じように耳に携帯を当てた小柄で華奢な女の子がいる。髪はさらりと長く、サマードレス、もさい眼鏡を掛けた少女であったが、地の表情はたおやかで可愛いイメージのある少女だった。

颯太、携帯から耳を離し、驚いてセツナを見つめる。

セツナ、同じように携帯を離して颯太に近寄る。

颯太はぎこちなく、ギクシャクとセツナに挨拶をする。
颯太「セツナ......さん? ぼ、ぼくです、あの」

セツナがふと微笑む。安心したような笑顔だ。
セツナ「よかった」
颯太「あ、うん、すぐ会えて──」
セツナ「あ、ううん、そうじゃなくて。そ、想像してた通りのひとだったから」

そういって セツナはぎこちなく微笑む。
セツナ「あ、あらためてはじめまして、私、あの、島崎由那って言います。颯太さんは、その......本名なんでしょうか?」
颯太「う、うん、つまんない名前だよね」

目を逸らしたまま。目はメガネの反射に隠れて見えない。
セツナ「そ、そんなこと......ないです。私は、その、普通が一番、安心する......かな」


172.4/回想。幕張メッセ。多くのブースが出展され、MCが喋る。自衛隊の武器の展示もある。

人の群れと熱気に押されながら、ブースを回る二人。

颯太はパンフレットを開いてセツナに聞く。
颯太「ええと、『前田敏郎P×絵師サカキタカツ×声優中原さくら・メガロスフィア爆裂トークショー』......あ、これだ」

壇上には人気絵師とメガロスフィアの製作陣。背景のモニターには『悠久大戦メガロスフィア』のゲーム画面が大きく映し出されている。

すでにトークショーは始まっていて、椅子のないブースは背の低いセツナはぴょんぴょんと飛ぶが、どうしてもステージに目が届かない。
セツナ「ううん、うーん、見えない......


颯太「少し、遅れちゃったね......


困ってきょろきょろと見回す颯太。ふと見上げると、そこにダクト調整用の業務用空中回廊が。
颯太、セツナの手を握り、引っ張る。
颯太「セツナさん、こっち」
セツナ「ふあ!?


172.5/回想。こっそりと案内する颯太。イベント中でスタッフが出入りする用に鍵は掛けられていない事を確認し、通路に入る。

イベントスタッフが携帯で話をしてる間にこそこそと通る二人。

イベント用の備品がそこらへんに転がっている中、足を取られながらも進む。

そのうちに、ちょうどイベントステージが見下ろせるポイントに到達する。
颯太「ほら、ここなら観れるでしょ......そこ」

指差す先には『前田敏郎P×絵師サカキタカツ×声優中原さくら・メガロスフィア爆裂トークショー』のステージが。
セツナ、目を輝かせて。
セツナ「あ、見て! 絵師さん、落書きしてる!」
颯太「あ、本当だ」

絵師の手元を見て、大喜びのセツナ。もっとよく見ようとして、身体を乗り出す。

傍らにあった荷物が崩れそうになり、慌てて押さえようとしたセツナがバランスを崩し、落ちそうになる。

颯太、慌てて。
颯太「危ない!」

彼女の肩掛け鞄を掴み、落ちかけたセツナを非力ながらも必死で引っ張り上げ、抱きとめる。

荒い息の二人。

汗まみれの二人、やがて抱き合って緊張から引きつった笑いを浮かべる。
颯太&セツナ「あ、あ、あは......あははは」
颯太「良かった......落ちたら、大変だ」

颯太に抱きすくめられたままのセツナ、どこか満足そうな表情を浮かべ。
セツナ「凄い」
颯太「何が?」

今さっき危険な目に会っていたとも思えない様な笑顔ではにかむセツナ。
セツナ「こんなのって、冒険です。冒険、じゃないですか」

抱き合ってる状態に気付き、慌てて身体を離す二人。
颯太「で、でもここ、よく見れたでしょ? も、もう行こうよ、見つかったら怒られちゃうし」

顔を見て、眼鏡がない事に気付く颯太。
颯太「あ、眼鏡」

セツナ、顔に手を当てて気付く。
セツナ「多分下に、落ちちゃいました」

下を覗く颯太。しかし眼鏡は見当たらない。
颯太「駄目だ......何処に落ちたのか、解らないや」

セツナ、足元がおぼつかない。手すりを捉えそこね、態勢を崩しかけるところを慌てて颯太に掴まれる。
セツナ「ああ、すみません。んー......、やっぱりメガネがないと、ぼんやりしますね」

とにかくなんとかしなきゃいけないと、慌てておかしな事を口走る颯太。
颯太「あ、あの、ぼ、僕の眼鏡、駄目かな」
セツナ「普通は、合いませんよ」

そう言いながらも颯太の顔から眼鏡を外し、自分で掛けてみるセツナ。
セツナ「どうです?」

その顔の美しさに、少し見とれる颯太。

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