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7 july

7月18日

7月18日

   

173/再びスタジアムへと画面戻る。颯太の独白を聞く松原は、ただタバコをくゆらせて颯太の顔を見ている。

駿河は相変わらず持ってきたスケッチに落書きしているが、耳は颯太の方へ向かっている。
颯太「それからも、僕らの付き合いは続きました。セツナさんはその間にも、どんどん作品を発表して......そのうち、SNSではすごく有名な存在になっていったんです」

颯太の目が暗くなる。


回想。ピックアップ記事でセツナの話題を見る颯太。自分のページに戻り、低い評価の自分の絵を少し寂しげな目で見つめ、ブラウザを閉じる。そんな時、セツナからメッセージが。


(書き込み)「(セツナ)『今度、あの動画で有名なしましまPさんと一緒に動画を作ることになりました!わたしは凄く──』


黙ってその書き込みを閉じる颯太。
颯太「僕は......あの子との間に、すごく距離を感じはじめていました......だから、連絡もこちらからは取らないようになっていって......でも、そんな時に、ある書き込みを見てしまったんです」

颯太のモニターに2chまとめサイトが映し出される。
そこには「パクリ絵師セツナその5」という記載と、それに続く悪口雑言の数々が。


(書き込み)
「名無しさん/お腹いっぱお//構図丸パクリ」
「名無しさん/お腹いっぱお//調子のってんじゃね? 最近しましまPとかと一緒にやってるから」
「名無しさん/お腹いっぱお//『天球図』もavend先生の曲パクまんま」
「名無しさん/お腹いっぱお//剽窃絵師セツナに関してまとめwiki立ち上げました 協力して下さい リンク参照」
「名無しさん/お腹いっぱお//コイツは凄い悪質 今の所『イロハサイクル』だけだけど掘れば出て来そう」
「名無しさん/お腹いっぱお//しましまPも、こんなパクリ絵師使うなんてもはやオワコン」
「名無しさん/お腹いっぱお//セツナ自殺しろつまんねー絵描いて調子乗んな」
「名無しさん/お腹いっぱお//俺関係者だけど、最近は昔つき合ってた連中の悪口ばかり言ってるクズ」


颯太「言いがかりでした。多分、急に注目されたあの子を疎ましく思った誰かが、火をつけたのでしょう。そんな訳がない、何かしなければ、彼女を助けなきゃ。そう思いました。でも、僕が書き込むことで、却って火に油を注ぐ結果になったらどうしようと考えると、心が竦んで......、僕は結局、どうすることも出来ませんでした。......それに」

颯太が俯き、目が暗くなる。

その空気を察知したかのように、駿河の目が颯太の方を向く。
颯太「それに」

はあ、と息を飲んで。それを強く吐き出さなければ、喋れないように強く喋る颯太。
颯太「僕の中のどこかに、きっと......嫌な満足感があったんだと思います。あの子が足を引っ張られることで、自分が置いて行かれる寂しさが、少しだけ消えてゆく様な......そんな嬉しさが、多分......」

松原、眉毛を僅かにしかめる。

はあ、と短い息を吐き、興味なさげにスケッチブックへと戻る駿河。


回想。学校からの帰り、携帯にLINEの通知が来ていることに気づく。


(書き込み)「(セツナ)『お久しぶりです。お元気ですか』


うっ、と息を詰まらせる颯太。文字が流れていく。


(書き込み)「(セツナ)『最近はあまり連絡とってませんでしたね。わたしは今、ちょっと色々ありすぎて、なんだか解らなくなってます。』


(書き込み)「(セツナ)『前は描いてて楽しかった、私はお友達もあんまりいなくて、描いたり作曲したりする事が、私には、とっても大きな事で、なんだか生きてる事を楽しくさせてくれてたのです。でも、最近はもう、よく分からない』


直球すぎる独白がLINEの上を流れていく。どう返したらいいかわからずに煩悶する颯太。
駅に着き、人が降り、また人が乗ってくる。それでも颯太は座ったまま、LINEを送りつづける。


(書き込み)「(セツナ)『私は、言われているようなこと、どれもしていないつもりです。でも、このことで言葉を返して、人とけんかもしたくありません。それでも、少しだけつらいです。描くことが、悪いことのように感じています』



(書き込み)「(セツナ)『颯太さん、わたし、描いてもいいのでしょうか。続けてもいいのでしょうか。......描きたくなっても、いいのでしょうか』


そこで書き込みが、一度止まる。

携帯の画面を見つめ、逡巡する颯太。
颯太『僕に聞かれても、僕は人気者の立場にいないから解らない。聞かないで欲しい』

そして送信を押す。

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