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レクリエイターズ ネイキッド

7 july

7月23日

7月23日

   

181/回想。廃墟。重いブーツが汚れた床を踏みしだく。しかし外の光景はまるで現在の東京と違う、ディストピアめいたサイバーパンクの景観だ。割れた窓からネオンの光が毒の様に漏れ出している。暗い廃墟での銃撃戦を超え、一室に踏み込むブリッツ。相棒である『シンカー』リュウスケの名を叫ぶ。
ブリッツ「リュウスケ! 生体反応は! CDDメディカルのタグが反応している筈だ!」
リュウスケは「シンカー」を開始し、場所を特定する。目の前に立体式デジタルのモニターが浮かび、その場所を示し出す。

銃を構えたまま怪しげな機械が並ぶ処置室へと飛び込む。そこでは狂気にまみれた緑の手術着を着た、痩せた中年が絶命しかけている。
医師「遅かったよ、親愛なる君よ。......どうやらこれは、失敗だった様だ」
医師「生体連結炉の動力としてうってつけの検体だったのだがなあ......まだ足りないものがあった。そのせいで制御が出来ずじまいだ......見ろ」

傍らには奇形の怪物が切り裂かれて死んでいる。
医師「怪物共を制御するには、幾つかの行程が抜けていた......。古い演算装置を使ったのが良くなかったな、金を惜しんで失敗した」不快な笑い声を上げる医師。
医師「早く止めないと、この門は地獄に繋がるぞ......私にもどうしょうもない......」

その後ろから飛び込もうとするブリッツ。
リュウスケ「止せ! ブリッツ、見るな!」

そこには解体されたエリナの姿が。しかし内臓は乱雑な機械へと繋がれて脈動を続け、その機械は何かの門となって不気味な唸りを上げている。水槽の中でまだ意志の残っているエリナの首が、ブリッツを見つめている。
エリナの口が動く。「パパ」と言っている口だ。
ブリッツ「エリナ!」

リュウスケがブリッツの前に飛び出す。
リュウスケ「動力炉を止めないと」
ブリッツ「どけ、リュウスケ」

リュウスケに銃を向けるブリッツ。
リュウスケ「諦めろブリッツ、お前の娘は動力炉に組み込まれた、もう死んでるんだ!!


医師の死体を見遣るリュウスケ。
リュウスケ「こいつの言ったことは本当だ......こいつがぶち抜いた地獄の門が開きかけてる。そうなったら俺たちじゃ手が出せない、武装民警でも駄目だろう。ひょっとしたら軍隊ですら」

目を伏せて。
リュウスケ「彼女は助からない」

ブリッツ、普段冷静な表情からは想像もつかない程に狼狽している。
リュウスケ「お前が出来ないなら俺が──......」
ブリッツ「私がやる」

震える手で銃を向ける。強面の男の表情が歪み、眼鏡の下が涙で溢れる。
ブリッツ「エリナ」

水槽の中のエリナ、父親に向けて微笑みかける。

顔を背けるリュウスケ。

ブリッツの構える銃が火を噴く。

崩れる廃墟、動力を絶たれた次元装置は内側へと吸い込まれる様に崩潰していき、エリナの遺骸もその中に吸い込まれていく。


182/男「大丈夫か? あんた」

ブリッツ、頭を振る。酔いつぶれて寝てしまったらしい。アルタイルの居城、伽藍の廃墟の中にいる。覗き込んでいるその男に見覚えのない事に気付く。素早く飛びずさり、拳銃を構えるブリッツ。

その様子を見て、軽く溜息をつく男。
男「悪いなおっさん、挨拶しようと思っただけだ」

少しのにらみ合いの後、銃をしまうブリッツ。
ブリッツ「......新参かね」
男「そう言う事になるかな」

ブリッツ、手を差し出して握手を促す。
ブリッツ「私はブリッツだ。君は?」
翔「外人みたいだな。俺の名前は、『翔』だ。『白亜翔(はくあしょう)』」

握手をして、三節昆をぐるりと回す。

ブリッツ、苦笑して。
ブリッツ「ああ、知ってる。優夜、とかいう若造の友人だな」

翔、目付きが鋭くなる。
翔「知ってるのか、優夜を?」
ブリッツ「私は、大層嫌われている様だがね」
翔「奴の居場所は解るか」
ブリッツ「さあね。『軍服の姫君』なら解ると思うが」
翔「朗報だぜ。あんた達が奴の敵なら──俺はあんた達の味方だってことになる」

一本の棒を引っぱり、鎖の音を響かせながら三節棍に変える翔。
ブリッツ「彼はなかなか面白い芸を持っていたが──君も、彼みたいなものは出せるのかね?」
翔「こいつの事か?」

そういうと紅い焔が背中から立ち上り、金色の騎士が立ち上がる。
翔「俺の星幽複体(アストラ・ダブル)バイヤールだ。とは言え知り合いの、占い師やってる爺さんが勝手に着けた付けた名前で、由来は俺も詳しく知らねえ」

険しい顔になる翔。
翔「優夜が来てンなら、どこだろうが決着着けなきゃ、いけねーからな。奴は──俺達を裏切って、ダチの一人と妹を殺した。あんた達と一緒にいりゃ、奴もそのうち現れるだろう」
ブリッツ「大層な理由だな。まあ、ここに来た『被造物』は皆、大仰な理由を持ってるが」
翔「ああ、俺たちはこの世界の奴らに『お話』として創られたんだってな。あの軍服コートの女に聞いたよ。俺はまだ、100%信じちゃいねえが」

ブリッツ、今自分が見ていた悪夢を振り返る。瞬間の回想が頭をよぎる。
ブリッツ「世界の真実を聞いて君は──神に復讐する気は起きないかね? もしくは、神に願い事をしようという気は?」

ぶすっと呟く翔。
翔「優夜に償わせる方が、先だ。他の事はあとで考えるよ」

呆れた様に呟くブリッツ。
ブリッツ「順序としては、願い事の方が先だと思うがね。ここに来て気付いたが、どうも君らみたいな『主人公』という奴は、動機の方向が単純にすぎる。思えばリュウスケもそうだった」

どっか、とソファに座り込む翔。
翔「とにかく、あんた達が出るときは連れて行ってくれ。とくにあんた」

ブリッツを指差す翔。
翔「あんたが奴に嫌われてるなら、あいつは必ず決着を着けに来る。スッキリしない事を放っておかない性格の奴なんだ、あのバカは」

そこにあるソファに寝転がる翔。

ブリッツ、立ち去ろうとしてふと気付き。
ブリッツ「そういえば──騎士殿を見ないな」

翔、顔も上げずに。
翔「さあね。あれ、あんたの彼女か? とてもそうにゃ見えないけど」

ブリッツ、少し逡巡するが肩を竦めて。

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