ロゴ

LINEで送る
ツイート
Facebookシェアボタン

レクリエイターズ ネイキッド

7 july

7月27日

7月27日

   

190/メテオラ、意外な事を思い出した、という様な顔の菊地原に振り向き。
メテオラ「キクチハラ?」
菊地原「水篠さん、あの高校生の子なんですが、彼が作劇に参加させて欲しいという事で、松原さんが了解したと」

メテオラ、少し驚いた様な顔をするが、ややあって笑顔を見せ。
メテオラ「そう。それは良かった」
菊地原「そうですか?」
メテオラ「ええ。個人的な事ですが」
菊地原「それで......水篠さんの提示した話というのが」

トラックが轟音を共に走り、設営班が再び動き出している。何を喋ったかは聞き取れない。メテオラ、軽く頷くと、顔を曇らせて考え込む。
メテオラ「......なるほど」
菊地原「松原さんは、面白いと言ってました。だから、それを含めて組み込んでみよう、と」
メテオラ「......端的に言って、それは難しいと思う」
菊地原「水篠くんの、実力の問題ですか?」
メテオラ「いや、そうではありません。構造上の問題です。恐らく──それでは、『承認力』が得られない」
菊地原「......周りの創作者が肉付けしても、ですか?」
メテオラ「キャラクターの肉付けをすれば当然、『承認力』は上がる。でも、私達が欲する威力は相対的に落ちて行く。反面肉付けしなければ、『承認力』は現界を促す事すらままならないほどに低いと予想します。彼らの想定しているものは、そういう矛盾を宿命的に持っている」
メテオラ「今現状では、現実性がないと言わざるを得ない」

天を仰いで。
メテオラ「......何かの奇跡があれば、また前提が変わって来るけれど」


191/仮設スタジオ、パーティションで区切られた各々の作業スペース。

かなり憔悴しながらも作業を続ける原作者ブースの一行。
八頭司「これ全部終わったら旅行行くぞ。旅行」
松原「ああ? そんな贅沢言わない。十五時間寝る。絶対寝る。おっさんだから身体が保たない。死ぬ」

もくもくと描き続けている駿河。
八頭司「あんた、何の燃料で動いてんだ」

駿河、顔も上げず。「ペン使こてんの、愉しいねん」

まりね、ぐ、と腕を上げて。
まりね「松原さん、大丈夫、これはもうすぐ片付きます」

松原は椅子に寄りかかって呟く。
松原「彼の方、大丈夫か」
八頭司「ああ、あのー、ファンタジー漫画の、なんてったっけ」
駿河「高良田さん」
まりね「ああ、さっき......」

と言った所で、菊地原が高良田を同伴し、松原を呼びに来る。
菊地原「すみません。彼から、少しお話があると」

菊地原の後ろからコンテ用紙を抱えて姿を現す高良田。

八頭司が駿河に耳打ちする。
八頭司「あの人も、大して寝てねえんじゃねーのか」

相変わらずペンを走らせながら、駿河。
駿河「敵さんのとこから逃してくれた自分とこのキャラと、なんぞ約束しとったみたいです。それで気負っとるんちゃいますのん」


192/松原達の作業スペースで話しはじめる高良田。

菊地原も同席している。
松原「それ、アリステリアから聞いたのか」
高良田「聞いてないです。でも、俺はあいつの作者だから解る。絶対にそうする筈だ」
高良田「彼女──アリステリアは、多分謀反を企んでる。アルタイルに対抗出来る様な、何かの技を今からでも追加出来ないと、あいつが窮地に陥る」
松原「信用出来ます? それ」
高良田「松原さん」

真剣な顔で松原を見る高良田。
高良田「松原さんも、セレジアさんを信頼出来るでしょう。普通のひと、以上に」

松原、頷いて高良田は話を戻す。
高良田「──だから、相手方に知られない様にしないといけない」
菊地原「今から組み替えは......」

松原が話を戻す。
松原「でも、アリステリアのキャラクターからすると......彼女、背中から襲う様な真似をしますか」
高良田「今の彼女なら、きっと出来ます。何が本当に大事かは決して間違えない、そういう奴だ」

松原と高良田、顔を見合わせて話をしているのを、真剣な面持ちで聞いている菊地原。
松原「今の所、現実に進行してるのと同じ様に、作品もメテオラを支点にして動いている。じゃあ、アリステリアの例の篭手──あれとメテオラを繋げる理屈考えて、それでなんとかしましょう。いいすか、菊地原さん」

菊地原、溜め息をついて。
菊地原「解りました」

そう言って携帯をぴぽぱと押す菊地原。呼び出し音の後、中乃鐘の声。


193/中乃鐘「はい中乃鐘です、すいませんまだ手が──」
菊地原「アニメの方のシナリオで変更の相談です。至急で」
中乃鐘「えっマジすか。えー......、じゃ今行きます!」

そんなに離れていない作業場から、走って来る中乃鐘。
中乃鐘「今回の配信分作業が詰まっちゃってて。あ、それとあとで監督が、次の回の演出の件で、もっぺんブレストさせてくれないか聞いてくれって」
松原「この話済んだら一緒に行く。にしても、うまい手の抜き方考えないとな」
中乃鐘「それも難しいんですよ。変な所で手抜いちゃうと、やっぱり『承認力』に引っかかる気がして......


中乃鐘は振り向いて。
中乃鐘「で、話、具体的になんすか」
松原「アリステリアの件で。今から次辺りの回に、伏線組み込めないかって」
中乃鐘「うおお、また無茶ぶりしますねえ、ほんと」

高良田、済まなそうに中乃鐘に頭を下げる。
高良田「すいません、参加が遅れたもので」
中乃鐘「監禁されてたんですもん、しょうがないですよ」

頭を掻きながら中乃鐘。
中乃鐘「しかし、今から......今から......厳しいなあ。いやね、メテオラさんからもせっつかれてるんですよ。今、マンガと小説をぶつ切りに出してって、同時にアニメも随時配信してるじゃないですか。だいたい伏線も出揃ったんで、あとはメテオラさんが作った、なんだっけか」
菊地原「イヴァリュエーション・トレーサー」
中乃鐘「それそれ。あれでずっと企画がうまく行ってるか観測してまして、準備が整い次第こっちから打って出ようって。そのイベントの日取りもそろそろ確定させようって言うんで、調整大わらわですよ」
菊地原「ええ、私が進行管理なので、胃がかつてない程の勢いで千切れそうです」

そこへやって来る、小柄で天パーの賑やかな男。

毎日0時更新です