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8 august

8月17日

8月17日

   

237/弥勒寺の木刀を払った翔が異変に振り向く、同じ様に振り向くアリステリア。

ギガスマキナの鹿屋も同じ様に気付く。
鹿屋「やった!?」

CIC。菊地原がモニター画面に乗り出し、松原達もモニターを見つめる。

セレジアも眼前を確認する様に乗り出す。

セレジア、周囲を注意深く見回すが姿はない。

セレジア「いない......うまく行った? ......これで──」

セレジアの首を抱く様にコクピットの後ろから手が伸びる。

耳を寄せ呟く声。アルタイルの、どこか悦んでいる様な、じめりとした声。
アルタイル「これで──大団円だと思ったかな? セレジア」

ひ、と悲鳴を上げるセレジア。

松原が恐怖に目を見張る。CIC内の全員、空気が凍る。
松原「うそ、だろ」


238/アルタイルに抱きすくめられて身動きのできないセレジア。
セレジア「どう、して」
アルタイル「どうして?」
アルタイル「門である以上、出口はあるものだよ、セレジア。無限の中の一つの出口を、余が指し示す事が出来ないとでも?」

セレジア、殺気に身動き出来ないが、それでも苦し紛れに減らず口を叩く。
セレジア「......そんならここからだって、すぐにでも逃げられるでしょうに」
アルタイル「残念ながらメテオラお手製のこの牢獄は特別、誂(あつら)えだ。今現在の私では、まだ力が足りない」

「今現在の私」という言葉にはっとするメテオラ。

セレジアのその耳に、更に口を寄せて囁くアルタイル。
アルタイル「さて──ここで君を倒すのはやぶさかではないが。ねえ君、『承認力』は私達にはなくてはならないものだ、それは承知の通りだねえ?」

セレジア、その言葉に驚く。
セレジア「......あなた、『承認力』を──」
アルタイル「ここで君をリタイアさせても、これを見ている我が観客は「面白くない」だろう。それでは──色々とまずいのじゃないかな?」

メテオラは目を見開いて悟る。
メテオラ「......奴は、法則を全て理解している」

ふとアルタイルの圧力が消える。慌ててセレジアは振り向くが、そこには誰もいない。と、外のマイク音声からアルタイルの喋る声。モニターを向くと、再び空中に浮かんでいるアルタイル。

アルタイルがにやりと口の端を歪めて笑う。
アルタイル「饗を削ぐのは物語として正しくない。宴を続けようじゃないか、セレジア」


238.1/オタク系の本などの装丁(ラノベの表紙とか)をやっている、デザイン事務所の一室。おしゃれな感じのデザイナー兼オタク達。

クリエイター側だが、今回の企画は関係していない。動画配信を何名かが見ている。
デザイナーA「なんだよ、セレジア死なないの?」
デザイナーB「殺すわけないでしょ、せっかく売れてるキャラなんだから」
デザイナーA「じゃあ、これでパワーアップする流れかぁ?」

椅子を揺らして奥にいる佐藤というデザイナーへ声をかける。
デザイナーA「んー......。佐藤さんなら、こういうのどうします?」
事務所の奥から、
佐藤「衣装換えパワーアップで、ゲーム版が出たときに追加衣装として、ダウンロード販売!」
一同「ああ」「なるほど」


239/翔が木刀を払って飛びずさる。剣戟を交わし、二人は再び距離を開けて弥勒寺が叫ぶ。
弥勒寺「──ところで、おっさんはどうした? コートの中年だ。一緒じゃねえのか!?」

バイヤールは鏡面から攻撃をしてくる。それを除け、三節棍を避けて優夜が言う。

二人、立ち位置を離して一旦対峙する。
翔「聞いたぜ、奴に貸しがあるってな!」
弥勒寺「ああ」

再び剣戟。一瞬の交差の後また離れる。
翔「他人に気ィ散らしてっと死ぬぜ、優夜!」

再び飛びかかる翔。
弥勒寺「お前、俺の性格は知ってんだろ?」

また打ち合い。バイヤールの突きを辛くも避けて、木刀の衝撃波を翔にぶつける。

翔はそれを防ぎ、再び優夜に飛び込む。
翔「ああ、知ってるぜ。借りは返さねえと夜も眠れねえって、神経質な野郎だってな!」

鍔迫り合いになる翔と優夜。目の前で互いの武器を挟んで対話。
翔「彼はここには来てない。残念だがな優夜、お前の相手はこの俺だけさ」
弥勒寺「......んだと?」

再び三節棍を払って飛びずさる弥勒寺。

弥勒寺、その言葉が何を意味するか気付いて眉を顰める。


240/会場内、通路を歩く人波の中を歩く、ごつごつとしたブーツ。

別の場所。トイレや売店のある、スタジアム外周の廻廊。軽やかな足取りで踊る様に歩く黒い靴。

巨躯に目を見張り、その姿を椅子席から目で追う女性客。

喪服の女の姿に振り向く、トイレから出て着た男性客。
女性客A「ねえねえあれ、見た? 今の」
女性客B「コスプレ? 凄いね」

暗いスタジアム内で何かを探す様に振り向くブリッツ。


240.1/

トイレ前の男性客C「今すれ違った......あれ、あのキャラだよな」

トイレ前の男性客D「すっげー、完璧なコスプレじゃね?」

小脇にスナックの紙袋を抱えて楽しそうな真鍳、その男性客に向かってにこやかに指を指す。
真鍳「はあーい、君、アッタマ悪そうな顔してるね」


241/メテオラ、ブリッツの不在を聞いてか聞かずか、歯をぎり、と噛み締める。
アルタイルも、目を細めて笑う。
菊地原、驚いて振り向く。
菊地原「やはり、彼はここに?!」
メテオラは頷く。


242/スクリーンに映る弥勒寺のセリフに、乗り出す様に見る颯太。その刹那、隣からのんびりした声が聞こえる。
真鍳「ああん、画面見えないじゃん。そんなに興奮しないでよう颯太君」

その声にはっとする颯太。

ザラメのかかったチュロスをじゃり、と齧る音がする。
真鍳「こおんなこと、やってたんだねえ。うっふっふ」

振り向く颯太。いつの間にか座席に座り、映画を楽しむ様に、にやにやしながら真鍳が画面を見ている。
真鍳「みーんな揃って、なにをゴシャゴシャやってんのかと思ったらさ。なーんか、面白そーなことやってんねー。うんうん、集団コードーは大っ嫌いだけど、楽しい事なら是非混ぜて欲しいのだねえ、マガネちゃんは!」

チュロスの箱を颯太に差し出し、屈託のない笑顔で喋りかける。
真鍳「食べる?」


243/スタッフ用の控え室。今は無人だ。

後ろ向きに座る駿河。煙草の煙が一筋立ち上っている。

がちゃり、とノブが回る。入って来る人影、ブリッツだ。
駿河「......律儀やなあ」

ブリッツは拳銃を手の前に翳す。

駿河、それをさりげなく遮る様に、しかし静かに呟く。
駿河「言いたい事、あるから来たんやろ、自分」

ブリッツは、眉を上げる。
ブリッツ「......ああ。言いたい事は星の数程ある。ただしそれをここで述べるには、いささか時間が足りなくてね。だから」

ふたりが同時に呟く。
駿河「『──言葉に換え、銃弾でその全てを語りに来た』」
ブリッツ「──言葉に換え、銃弾でその全てを語りに来た」

ブリッツに振り向く駿河。ブリッツは言葉を失う。
ブリッツ「何故──」
駿河「解ったか? 当然や。ウチなら、そうネーム切る」

駿河は煙草を一本銜(くわ)え、火を着ける。紫煙を吐き出してブリッツを見る。
駿河「ウチは、あんたの神様やで」

駿河を睨みつけるブリッツ。
ブリッツ「──最悪な気分だよ、あんたみたいな女が私の世界の神だとはね。牛の糞にでも祈っている方が、まだマシだ」
駿河「ま、そうやろな。ウチもまさかこんな事になるとは、思わんかった」

駿河は落ち着いた様子で紫煙を吐き出す。
駿河「......ブリッツ」
駿河「あんた、鉄砲で片を付けたかったら、それでもええ。ただ──疑問もなんも、ウチと一緒に墓の中やで。おたくは、それでええんか」

少し逡巡した後、言葉を繋ぐブリッツ。
ブリッツ「──『軍服の姫君』と、同じ様なことを言うんだな」
ブリッツ「彼女と共に、あそこにいるつもりだった。彼女に是非にと薦められた」
駿河「保険も兼ねてな。ウチらが思ってた通りの、賢(さか)しい女や」
ブリッツ「......確かに君の言う通り。はっきりしないまま、全てを墓に葬るのも詮無い話だ。娘に地獄でしてやれる話も無くなってしまう。だから、幾つかの質問をさせて頂く事になるが、構わんかね、主(しゅ)よ?」

駿河は一本目の煙草をもみ消す。
駿河「ええよ」

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