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9 september

9月6日

9月6日

   

308/『被造物』の四人が、驚愕の目でアルタイルを見つめる。

シリウスは変わらない無表情でアルタイルを眺める。

アルタイルがもう一度サーベルを構え直す。
アルタイル「ああああッ!」

中空を滑る様に飛んでシリウスへと肉薄する。シリウス、槍を盾にしてサーベルと鍔迫り合う。不意に槍を一回転させ、逆手にもっていきなり地面へと突き刺す。突き刺した所から閃光が迸り、その閃光と地割れが幾何学で構成された魔法陣へと代って、同心円状に高速で広がってゆく。その刹那、アルタイルの動きが固着したかの様に静止する。
アルタイル「なにッ」

サーベルを振りかぶった姿のまま静止するアルタイルを見遣ると、無表情のまま呟くシリウス。
シリウス「......『森羅万象』第六十六楽曲。『実存相変移』」

アルタイルは目を見張る。

シリウスがそう呟くと槍を引き抜き、一気に自らの腹部へと槍を貫通させる。

その瞬間、シリウスの形がブロックノイズに包まれて乱れる。と同時に、硬直しているアルタイルの身体が震え出し、同じ様にブロックノイズに包まれる。その像が乱れると、ブロックノイズが走った所からアルタイルの身体がちらつく様に明滅する。その明滅の先にあるのはシリウスの姿だ。シリウスの方も、同じ様に画像が乱れていく。
アルタイル「貴様」

憎々しげにシリウスを睨むと、呪う様に呟く。ブロックノイズがアルタイルの顔を包むと、声までもが雑音に塗れていく。
アルタイル「余を──乗っ取ろうというのだな」

アルタイル、声でシリウスを殺そうかという勢いで叫ぶ。
アルタイル「......貴様が、このアルタイルになろうと、いうのだな!」

ブロックノイズで乱れながらも、無表情にアルタイルを見るシリウス。


309/CIC、松原が同じ様に険しい顔でアルタイルを睨む。
松原「その通りだよ。消し去れないなら、変えてやる」


310/『森羅万象』の時の様な極光が空に円状に広がる。その波を受けると、『鳥籠』内のあらゆる模造された構造物がゆらぎ、ノイズを受ける。

衝撃に身を強ばらせるひかゆ、ブリッツ、翔、弥勒寺。

見ると、ひかゆの足がブロックノイズに乱れ、ひかゆが悲鳴を上げる。
ブリッツ「これは」
弥勒寺「やべえぞ、俺達も『被造物』だ、あいつの影響を受けてる。消えちまうぞ!」

CICの菊地原が四人に通信機越しに声をかける。
菊地原「何が起こってもおかしくない、警戒して下さい!」
翔「警戒っつっても、なにをどう警戒すりゃいいんだよ!」
ブリッツ「彼女を守る事に専念しろ、若造!」

空の極光を仰ぐ弥勒寺。


311/激しくノイズが散り、CIC内のモニターも明滅する。会場内大プロジェクターも同様。客がざわめく。
観客A「なんだよ、見えねーぞ!」
観客B「演出?」

メテオラ、自身の前にあるインジケーターを見て、冷や汗を流す。そのインジケーターが激しく上下し、赤く明滅する。不安定さを物語っているかのようだ。


312/もう一度、空を最大級に強いオーロラが奔る。『鳥籠』内の世界が歪み、再び静寂が世界を支配する。一陣の風が吹き、瓦礫の銀座通りに砂塵を舞わせる。
弥勒寺「......終わった?」

ひかゆも顔を上げる。


313/静まり返るCIC内。メテオラの前にあるインジケーターも微動だにしない。会場内モニターもただ風景を映し出すだけだ。静まり返る会場内。


314/土煙が晴れる。中央にうつ伏せに倒れている一人の少女。一人しかいない。まだ僅かにブロックノイズがまとわりつくその身体が、僅かに震える。


315/CIC。その様子を見守るメテオラ、菊地原、そして創作者の面々。
菊地原「.........あれは、シリウス......」
中乃鐘「アルタイルは......」
八頭司「シリウスしかいねえぞ」
松原「うまく......いったのか」


316/弥勒寺が倒れているシリウスに走り寄り、その少女に手を掛けて転がす。その顔はアルタイルそのままだが、服装は白いシリウスのものだ。警戒して唸る弥勒寺。
弥勒寺「おい、おい、おっさん!」

かがみ込んでシリウスを抱き起こし、顔を覗き込んでいた弥勒寺。

困ったように振り向いてブリッツに声を掛ける。
弥勒寺「おい、おっさん。どうすりゃいい、これ?」
ブリッツ「目覚めのキスでもしてみたらどうかね。それくらいしか、思いつかん」

イヤそうな顔をする弥勒寺。
弥勒寺「キスう?」

ひかゆ、赤面する。
ひかゆ「キ、キス!? それはロマンチックが止まりませんね!」
翔「してやりゃいいじゃんよ、優夜。したら、笑ってやっから」
弥勒寺「勝手な事抜かすんじゃねえよ! てめえら!」


317/突然轟音が聞こえる。翔が振り仰ぐと、ギガスマキナが飛んで来るのが見える。
ひかゆ「鹿屋くん!」

ひかゆが手を振る。
翔「ああ、あのロボット。生きてたのか」

少し離れた所に降り立ったギガスマキナ。外部音声から鹿屋の声が響く。
鹿屋「大丈──ぬあ!?」

そこにいるブリッツと翔の姿を見て驚愕する。

ギガスマキナ、軋みながら粒子加速砲を慌てて向ける。
鹿屋「おおおおお前ら!! この卑怯者!! ひかゆをいやひかゆさんから、離れろ!! さもないと──」
ブリッツと翔、顔を見合わせてから脱力したように呟く。
翔「ああ」
ブリッツ「そうか。彼は知らんのだな」

ひかゆ、手を振って誤解を解こうとする。
ひかゆ「あっ、違うんです、鹿屋くん! この人達は──」

弥勒寺がシリウスを膝に抱えたまま振り向き、のんびりとした声で言う。
弥勒寺「味方だよ、鹿屋ァ。ま、途中、いろいろあってな」
鹿屋「色々あり過ぎだよ!」
弥勒寺「そんなもんよ、世の中ってなァ」


318/メテオラ。インジケーターに目を走らせて。
メテオラ「アルタイルの実存係数は──ほぼゼロ。彼女は作戦通り......シリウスに飲み込まれた。そう結論付けても、差し支えない」

後段のまりねが、うわずった声を上げる。
まりね「やった......やったんですか? 私達は?」

中乃鐘を見るまりね。
中乃鐘「松原さん!」

松原は憔悴した顔で、しかし険しい目付きでモニターを見つめる。
八頭「あんたの手柄だよ、おっさん」

松原が難しい顔で、ぼそりと言う。
松原「これだけの為に、あんなキャラを作っちまった。作り手としちゃ、褒められた事じゃねえけどな」

まりね、心中を察するように松原の顔を見る。
中乃鐘「でも、あれは正しかったんです」

菊地原が静かに、マイクに向けて語り始める。
菊地原「......『エリミネーション・チャンバー・フェス』。現刻を以て作戦は完了。フェス、終幕準備」
菊地原「私達の危機は──去りました」

歓声はない。極度の緊張から解放されたという安堵感だけが、CICの空気を支配する。

まばらに起きる拍手、それは静かに大きくなって行く。


319/弥勒寺の膝元で、身じろぎを始めるシリウス。

はっとシリウスを見る弥勒寺。

シリウスは薄目を開けて、弥勒寺を見上げる。弥勒寺もシリウスを見る。
シリウス「......」

不思議そうに回りを見回す。

弥勒寺、ふっと笑う。
弥勒寺「よう。キスはいらなかったな」

その言葉に答えないシリウス。膝をついて、立ち上がる。ふらふらとして、まるで夢遊病者の様だ。
弥勒寺「あ......おい!」

呆れる弥勒寺。後を追おうとしたその時、CICの菊地原から通信が入る。
菊地原「弥勒寺君、シリウスの様子は」
弥勒寺「役人のねーちゃん。あいつ、喋りもしねえよ。ありゃ大丈夫か?」
菊地原「彼女は、人格が欠落している。喋れないのも、その為です」
弥勒寺「ああ。あいつぁ、対アルタイル専用の人形って訳か」

少し不審げな目をして呟く弥勒寺。
弥勒寺「......あんたらは、そういうものは作らねえと思ってたがな」
メテオラ「ええ。こうするしか方法がなかった」
弥勒寺「責めてるわけでもねえよ。ちょっと意外だっただけだ」
菊地原「撤収の際に、一緒に連れ帰って下さい」

弥勒寺、溜め息を付く。
弥勒寺「まあったく、最後まで手がかかるな」


320/ふらふらと歩くシリウス。まるで夢遊病者の様に歩いているが、ふと何かに行き当たるとその『もの』に目を移し、じっとそのものを見つめる。かがみ込んだ先にあるのは、アルタイルの騎兵帽だ。


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