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9 september

9月7日

9月7日

   

321/激闘の後。虚偽の銀座通りを、風が吹き抜ける。
ひかゆ「これから私達、どうなるんでしょうねえ」

ハッチの上で伸びをする鹿屋がそれに答える。
鹿屋「メテオラが、帰り方を考えてくれるよ。少なくともこれで、僕らの仕事は終わり」

煙草に一服付けるブリッツ。
ブリッツ「そう、崩潰がなくなった以上、戻るならいつでも出来るだろう。もし戻れなかったとしても──それはそれだ」
翔「それじゃ困るぜ。仲間を放っておく訳にはいかねえ」
ブリッツ「そう慌てるな。そもそも、ここと我々の世界の時間が、同じ様に流れているかどうかだって解らん」
ブリッツ「......腰を落ち着けて、振り返る時間があるのは悪くない。ここだって、見物すべきものは多いぞ。私は娘と一緒に、カミナリ・モンでも見に行くかな」

ひかゆ、笑いながらブリッツに話しかける。「娘さんと、早く一緒になれるといいですねえ」
ブリッツ「ああ」

そう言って、紫煙を吐き出す。


322/四人に背を向けたまま首を傾け、拾い上げた騎兵帽を手に力なく立っているシリウス。僅かにノイズが走り、足下から地面へと小さな世界の揺らぎが起きる。やがて騎兵帽を掲げると、静かに被る。


323/翔が風に吹かれ、瓦礫に腰掛けている。
翔「優夜、お前が──......」
弥勒寺「あん?」

そう言いかけた翔の目が、突然戦闘モードに切り替わる。
翔「優夜!!」

振り返ろうとした弥勒寺の胸を、飛翔して来たサーベルが貫く。
弥勒寺「ぐおッ!!」

弥勒寺、口から血を吐きながらもサーベルの飛んで来た先を振り返ろうとする。間髪を入れず二本目、三本目のサーベルが胴を貫く。続いて飛んで来るサーベル。
弥勒寺「......板額ッ!」

板額がそのサーベルを打ち払いシリウスヘと肉薄するが、シリウスの身体から盾の様に波紋状のノイズが走り、その『盾』に触れた板額は一瞬で消え去る。

もんどりうって倒れる弥勒寺。
翔「馬鹿な、板額が......一瞬で......」

驚くひかゆ。鹿屋も言葉を失う。ブリッツ、銃を構える。翔は歯を軋らせて相手を見る。
翔「......てめえ......!」


324/CIC、菊地原が声を上げる。
菊地原「馬鹿な!」

創作者のメンツも目を見張る。

メテオラが素早くインジケーターを見る。
メテオラ「実存係数はゼロ、やはりあれはアルタイルではない、そこにいるのは、シリウスの──......」


325/シリウスが呟く。
シリウス「──筈、か」

後ろ向きに立ったままのシリウス。身体からはブロックノイズが再び出現している。静かに鍔を降ろして位置を整える。鍔に隠れていたその顔を上げると、そこには『アルタイル』そのままの表情が宿っている。

足下から一気に同心円状に広がる光、そしてノイズ。

手を広げるシリウス。その手を合図にした様に、地面に無数のサーベルが現出し屹立する。
アルタイル「──さて」

風がシリウスの髪を逆巻かせる。ぐるん、と首を傾げて『被造物』達を見渡すシリウス。そこには眉を潜めた、侮蔑的な笑みが宿っている。服装はシリウスのものだが、ブロックノイズが服の上を走る度に白い衣装が黒く染まっていく。
アルタイル「さあ、我が友人達──余は帰って来たよ。ああ、まるで......生まれ変わった気分だ」


326/会場のモニターで復活を見る観衆。アルタイルの台詞に、「おおおおお」という、どよめくとも歓声とも付かない声が、唸る様に上がっていく。

CIC、菊地原が叫ぶ。
菊地原「どうして!!」

士官達も、モニターへ向き直る。

まりね、声も出ず口を押さえている。中乃鐘もあっけにとられてモニターを凝視している。

八頭司、松原に向いて。
八頭司「どうしてだ! あそこまで詰めた! 完璧だったじゃねえか!!」

松原、観念した様に目を閉じて、眉根を強く固く寄せる。
松原「......足りなかったんだ」
松原「俺達が作ったシリウスは、アルタイルに比べて、圧倒的に情報の密度が足りなかった。現界するまでの『承認力』は得られたが......結局、キャラクターの根っこにある『自我』まで掘り下げる事が出来なかった」
松原「奴を舐めてた。アルタイルにも、背景になる『物語』がない。それなら辛うじて行けると思ったが......くそっ!!」

メテオラ、顔を曇らせて。
メテオラ「──そこを、アルタイルに突かれた。彼女は実存を書き換えられる寸前、シリウスの蓋然性の揺らぎに滑り込み......」
メテオラ「シリウスを、乗っ取り返した」


327/再び中空にサーベルを展開するアルタイル。そのサテライトはそれ以前よりも勢いを増している。それはあらゆる片刃剣、外を取りまいているのは両手剣だ。
アルタイル「メテオラ......いや、違うな。こういう飛び道具は、創作者達の立案だ」

血を流して呻く弥勒寺を抱えるひかゆ。翔もブリッツも身動き出来ない。

アルタイル、どこともない空を仰いで言う。
アルタイル「『造物主』たちよ、聞こえるか」
アルタイル「誤算だったな。余には確かに、ここにいる彼らと違い、依るべき物語はなにもない」

彼ら──弥勒寺、翔、ひかゆ、ブリッツ、鹿屋は アルタイルの独白を聞いている。
アルタイル「しかし──だからこそ、我が愛しき朋友は、無窮の物語を余に賜った。千古不易の、自由の天地を与えてくれた。それは寄る辺なくとも、しかし欲望を無尽蔵に抽出し、感情を剥き出しにさせる断片的な散文詩」
アルタイル「余の実存を支えるのは......それらを付加していく無限の『造物主』達」

モニターの群。ニコニコ動画。そしてアマ、プロ問わないクリエイター達。

書いている多くの手、シーケンサーをいじる手。

次々と生み出される新しい『アルタイル』。
アルタイル「そして、感情を揺さぶる無限の観客達」
アルタイル「それらが相乗し、無限の可能性を産む。無限の力を、産む」
会場に集う聴衆、そしてニコニコ動画の弾幕。「いい事いうなwwwwww」「セリフはいいからはよ」「このコスの方がいい」「おれら応援してるンゴwwwwww」
アルタイル「私の血は──この身体は──そうやって成就したのだ」
手を握っては開く。試運転をしているタービン・エンジンの様に、上空で無数の剣の群が高速で回転、停止を繰り返している。
アルタイル「創造の力は誰かに受け取られ、感じ、想いを馳せ──そしてまた、その想いを糧に、再び生み出される。陰と明が久遠に回転し続ける様に。それは小賢しく制御された代物ではない。情動だ。暴れ狂う情熱だ。小賢しき理知など、激情の前では只の下僕に過ぎない。君達は、自らがその渦中にいながら、その力を見くびっていたんだよ。敗因は、それだ」

翔、その言葉に込められた敗北の意味に、息を詰まらせアルタイルを睨む。


328/会場内モニター。アルタイルの台詞に再びどよめく歓声。

しかし観客達は、アルタイルの勝利により共感を寄せている様だ。

アルタイルの復活、なす術の無い『被造物』達、打つ手が総て喪失してしまった事を悟った颯太。拳を握ると決意した様に、CICに向かって会場内を走り出す。


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