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9 september

9月10日

9月10日

   

339/メテオラの詠唱が早くなる。歩み寄るアルタイルのカット。ギガスマキナに再びレイラインの青い光が走る。ガタガタと揺れる操縦席。

浮かぶ紋章も、明滅を繰り返し、その形も定まらない。
鹿屋「くっそ......挙動が......安定しない......!」

メテオラ「導くは黄金の六具(ろくぐ)、銀擶(ぎんせん)は揺らぎの鎖を断ち切り、黎明の光を齎(もたら)さん──」

顔を歪める。インジケーターの光が弱まって行く。
菊地原「駄目......やはり現界出来る程の『承認力』を持ち得ていない......!」

颯太、胸元にあるペンダントを握りしめる。それは、真鍳のパイライトだ。それが何かの魔力を持った様に、不穏に歪んだ光を放つ。


340/羽田空港。海外便の発着アナウンスが流れる。キャリーバッグを引きながら鼻歌混じりに歩く姿。真鍳だ。彼女は手にしたスマホで、『エリミネーション・チャンバー・フェス』の動画を見ている。

画面に映るのは屹立するアルタイルの姿。

にい、と笑う真鍳。


341/颯太、息を呑んで『鳥籠』の映像を見つめる。手でパイライトを握り続ける。


342/真鍳「そう。それは叶う事のなかった、不完全な、真っ赤な嘘。だけど──」 に、と笑う口元。

CIC、メテオラの必死の詠唱にも係らず、目に見えて威力の減衰していく機器。
菊地原「推力が下がっている......反応が起きない......」
その時突如光の奔流がCIC内を巡り、激しいオーバードライブが始まる。機器が自壊しそうな程にガタガタと唸りを上げる。

メテオラが、はっ、と驚きに目を開く。

菊地原が、松原がその光景を見遣る。

颯太は、顔色を変えない。そうなる事がまるで解っていたかの様だ。
真鍳/颯太「嘘の嘘。それはくるりと──裏返る」

ばしん、と白い空電が世界を眩ませる。


343/アルタイル、柔らかな風に吹かれ、メテオラと同じ様に目を見張る。

彼らのいた銀座中央通りは、何故か三本ほどのホームが並ぶ、郊外の駅になっている。

夏の昼下がり。そこにいるブリッツ達以外は、無人だ。ホームの向こうには引き込み線が並ぶ見晴らしのいい光景になっていて、その向こうには山。遠くに、ただ蝉が鳴いている。

ブリッツとの距離は十メートル程だったが、その間にはいつの間にか二本の線路が走っている。そしてブリッツはホームの向かい側に、アルタイルは手前の線路に立っている。

ブリッツも、訝しげに眉をしかめて銃をアルタイルに向けたまま、周囲に目を走らせる。ひかゆ、翔、弥勒寺も同様だ。
ブリッツ「なんだ、一体......これは」

アルタイル、僅かに動揺を見せる。
アルタイル「ここは......知っている......」


344/静寂を打ち切るかの様に突然アナウンスが流れる。
アナウンス「──一番線、列車が、到着します。白線の内側まで、下がって、お待ち下さい」

アルタイルとブリッツとのホーム間に滑り込んで来る列車。何の変哲もない、普通の列車だ。アルタイルの目の前にその列車は止まり、やがてドアが空く。

車両には一人しか乗っていない。

ドアの前に立っている一人の少女。

降りて来たその姿を見て、声のない叫びを上げるアルタイル。


345/彼女が、降り立つ。小柄で華奢な女の子。髪はさらりと長く、地味で猫背の少女。地の表情はたおやかで可愛いイメージのある少女が立っている。眼鏡をかけているが、その眼鏡だけは颯太の掛けているメガネとそっくりだ。

電車は彼女を降ろすと、再びホームを離れていく。


ブリッツ達は向かい側のホームから、彼女を目にする。

弥勒寺が苦しい息の下から呟く。
弥勒寺「......あいつは......誰だ......」

息が出来ないかの様に、喘ぐアルタイル。口をぱくぱくとさせて、必死に声を出そうとする。
アルタイル「そ......んな......あなたは......──あなた、は」

少女は、にっこりと、しかしどこか気弱に微笑む。
少女「こんにちは。やっと......会えたね」

少女は自分の創作物の名を口にする。
少女「アルタイル」


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