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9 september

9月14日

9月14日

   

354/かん、かん、かんと、どこかで遮断機の音が聞こえる。軌道を打つ車輪の音が聞こえる。
CICの菊地原、不審そうに眉をひそめる。
菊地原「──なんの音?」

松原「電車......だと?」

難しい顔をしてモニターを見つめるメテオラ。
メテオラ「......依然として彼女の『承認力』は変動を繰り返し、安定していない。彼女が『現界』しているのは、未だにあり得ない筈の、奇跡の上に立っている──」
メテオラ「ひょっとしたら──あまりにも負荷のかかる現界に、最初からその刻限は決まっていたのかもしれない。ここにはない筈の駅舎、ホームまで全て含めて現界したのは、その最後の状況そのものの、トレースであるのかも」

不安そうな顔をしてモニターを見つめるCICの面々。
メテオラ「──ソウタ殿が『シマザキ・セツナ』に付加した......彼女に関する全ての状況を再現する為に。だとすれば──......これは唐突に終わりを告げる」

不安げにモニターを見つめるメテオラ。真鍳の仕掛けが完全ではなかった事、そして早過ぎる終わりにおののく颯太。
颯太「......そんな」

腹を括った様にじっとモニターを見続ける松原。


355/セツナはその音を聞くと、少し達観した様な表情になり、アルタイルから離れてホームの端へと、一歩、一歩と離れる。蝉が啼く。日差しは抜ける様に照り、暑い。


356/不穏な予感に襲われるアルタイル。
アルタイル「セツナ」

夏の熱風が一陣、二人の髪を揺らす。

急行列車の近づく音が大きくなる。
アルタイル「あれは」

近づいてくる列車の音を振り向くセツナ。風が一陣、セツナの髪を強く揺らしていく。
セツナ「私は本当なら、ここにいちゃいけないのです。これは奇跡。あなたのいた物語なら許されるけど、私の世界では起きてはいけない、歪んだ奇跡。だから」

そういって微笑むセツナ。その姿が一瞬、ブロックノイズに覆われて歪む。

息をのむアルタイル。セツナを見舞っている運命に、遅かれながら気付いたのだ。
セツナ「私の創ったあなたは誰かに語り継がれて、そして、ずっと紡がれてゆく。ずっとずっと先、形は変わってしまうかもしれないけれど、でも、それでもあなたはあなた。あなたはずっと、そこにいる」


357/世界が揺らぐ。一瞬、銀座通りに世界が戻る。またホームへと光景が戻る。
アナウンス「......番線......急行電車が......通過......いたします......白線の......内側まで下がって......―─」
ひかゆ「なんで? どうして列車が?」

ブリッツと翔、顔を見合わす。


358/微笑むセツナ。少しずつ、後じさってホームのふちへと近づく。

電車が線路を刻む音が、刻々と大きくなっていく。
セツナ「うん。......私は、あなたに呪いを授けてしまったかもしれない。でも、......この世界にあなたを描けて、本当に良かった。あなたが皆に愛されている事がわかって、本当に良かった」


358.1/急行が凶悪な唸りを上げて通過しようとする。あの日の様に、ふわりとセツナの身体が宙に浮く。


セツナ「それをあなたに伝えられて、本当に良かった。私もあなたが、大好きです」

時が止まる。急行列車の直前に落ちていくセツナの身体。セツナが死んだ日の、それは再現だ。


359/絶叫がアルタイルの口から迸る。
アルタイル「セツナッ!」


360/飛び出すアルタイル。サーベルが帯の様に広がり、車両を轢断する。

疾風の勢いでドラム式マシンガンを取り出すと、サーベルでヴァイオリンの様に弾じく。
アルタイル「『森羅万象』!! 第二十三楽曲──『因果再築』!!」

波状にオーロラが広がると、その光で列車の前部が球形のへこみとなって破砕される。メチャクチャに壊される列車。後ろの方は脱線しようとしている。


361/そのオーロラに歪む世界、ホームがビットのバグとなって消えかけ、ブリッツ達が叫ぶ。
翔「うおおおおッ!」

ひかゆが弥勒寺を庇う。
弥勒寺が苦悶の声をあげる。
ブリッツ「ダメだ、動けんッ!」
弥勒寺「駄目だ......くそ、消えちまうぞ......ッ!!」

彼らを包むバグが酷くなり、画面が白く飛ぶ。


361.1/

CIC、メテオラの前にあるインジケーターの値が暴発したかのように跳ね上がる。目を見張るメテオラ。
菊地原「値が......!」
メテオラ「『承認力』──いや、総ての観客たちの感情が、今、アルタイルの力に直結し、その能力値を変動させている」

メテオラ、振り仰いで。会場に目を戻せば、フェスの観客たちは列車の軋む轟音の中、魅入られたようにスクリーンに食いついている。
メテオラ「そう──総ての結末は」
メテオラ「人々の手に」


362/数万分の一秒で落下するセツナ、ドラム式マシンガンをかなぐり捨てて抱きとめようとするアルタイル。
水晶の様に散って行くガラスや機械の破片。


363/アルタイル「私はあなたに、再び会えた」

アルタイルはセツナを抱きしめながら叫ぶ。
アルタイル「私の心は、ずっとあなたと共にある。私はもう、あなたの知る私ではないし、あなたは私の知るあなたではないかもしれないけれど、それでも──私達はもう一度会う事が出来た!」


アルタイルは、セツナを堅く抱きしめる。世界がスローモーションで進んでいく。
破壊されてめくれ上がっていく車両。抗うかの様にその姿は元に戻ろうとし、しかしまた再びサーベルに破砕されていく。


アルタイル「あなたが世界から切り落とされてしまった、この絶対の0.5秒を──私なら、あなたが描いてくれた、この私なら!」

叫ぶアルタイル。その声は願いの様に響く。アルタイルの拳に力が籠る。
アルタイル「こうしてもう一度、救い上げる事が出来る!」


セツナが歪む。ブロックノイズにかき消されそうになりながら、アルタイルを掴む。
列車は尚も二人を押しつぶそうとするが、全てアルタイルのサーベルがそれを破壊し、阻止していく。
ホームもまた歪む。あらゆるイメージが錯綜し、背景は意味をなさなくなる。

セツナは懇願する様にアルタイルに叫ぶ。
セツナ「だめ、アルタイル、私は世界の一番大事な決まりをねじ曲げて、ここにいるの! 私を庇っちゃ駄目、全てが終わってしまう! 私はあなたを......あなたの、この世界を──喪いたくない!!」
アルタイル、固い決意と共にセツナを見据える。
アルタイル「私が、そんな事はさせない! 私があなたの物語を、途切れてしまったあなたの物語を創る!」

その言葉に驚くセツナ。
アルタイル「あなたのくれた、私の能力は『森羅万象』。それは因果をねじ曲げるだけじゃない。無から有を構成する事も出来る、無限の能力。あなたの創ってくれた私は──」

セツナの手を強く握るアルタイル。
アルタイル「世界を造り出す事も、出来るのだから!!」


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