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7 july

7月6日

7月6日

   

156/伽藍の廃墟。雨だれの様に水が滴る。

何処ともない、眼下に広がる夜景(遥か遠い)を見遣るアリステリア。

ブリッツは煙草をくゆらせている。
ブリッツ「誰が来るかと思ったが、中々面白い人物が来たな。いやはや、世界というのは驚きに満ちている。この神々の世界であっても変わらんね。そう思わんか、アリステリア」

思案に沈んだ表情で何事かを考えているアリステリア。
アリステリア「ブリッツ」

ブリッツは足を止めてアリステリアを見遣る。
ブリッツ「なにかな」
アリステリア「貴殿は、揺らぐ素振りもないのだな」
ブリッツ「何を言ってるか、私には解らんが」

また少し思案をするような表情のアリステリア。
アリステリア「まみかについて、何か感じ入る事は無いのか」

少し肩をすくめたブリッツ。
ブリッツ「残念だとは思っている」

足を止めるアリステリア。
アリステリア「それだけか」
ブリッツ「前の世界で、死は有り余る程見て来た。君だってそうだろう? 彼女に思い入れをして来たのは理解するが、感傷的に過ぎやせんかね?」

アリステリアはまた思案するような表情になる。
アリステリア「......娘を失った者にしては、随分と冷淡に見える」

ブリッツ、眉を僅かに上げる。
アリステリア「貴殿が私の来歴を知っているのと同様、私も貴殿の『物語』を詮索するだけの機会はあった。それだけの事だ」

ブリッツは、暫く黙って目を逸らす。
ブリッツ「......正直に言おう。君が創作者に要求し、改変しようとした目論みは総て失敗した。随分確率の低い賭けだ。そうは思わんかね?」

アリステリアは答えない。

次の煙草を取り出して火をつけ、紫煙を吐き出すブリッツ。
ブリッツ「この世界には、確かに奇跡があるかもしれん。認めたくもないが、神だって確かにいる。だが私は、無駄な希望を持つには、歳を食い過ぎてる」
アリステリア「――貴殿は、希望を繋ぎ元の場所へ帰還するつもりはないと?」

ブリッツ、肩をすくめて。
ブリッツ「何を言っている。その為に私はあの姫様に組しているんだ。勿論戻るさ、あそこだってそう悪い世界じゃない」

肩を竦めて苦笑するブリッツ。
ブリッツ「まさか相棒のリュウスケの奴が、主人公だとは思わなかったがね。やつの事も心配だからな。そうだ、家賃だって滞納している」
アリステリア「──貴殿は」
アリステリア「......貴殿の口調には、ときたま虚無が混じる。まみかの様な、元いた世界への憧憬が、貴殿の口調にはまるで感じられぬ」

無表情にアリステリアを見るブリッツ。
アリステリア「もう少し嘘を吐き慣れた方がいい。まみかを看取った、あの黒狐の様にな」

去るアリステリア。

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