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レクリエイターズ ネイキッド

7 july

7月29日

7月29日

   

196/伽藍の廃墟。目を閉じて佇むアルタイル。サーベルを小さな身体に持たれかけさせ、思案している様に月光を浴びている。やがてぽつりと呟く。
アルタイル「ブリッツ」

外の廊下でこつ、と足を止めるブリッツ。
アルタイル「前から尋ねたかった事が有る」
ブリッツ「何かな」

ソファから起き上がり、コートの皺を延ばして立ち上がるアルタイル。
アルタイル「......何故、余と行動を共にする?」

肩をすくめるブリッツ。
ブリッツ「決まってるだろう、他の連中と同じ理由さ」

アルタイルは出方を伺う様なブリッツを見つめて、溜め息をつく。
アルタイル「隠し事をする様な間柄でもあるまい。君は、──気付いているんだろう」

ふと考えるブリッツ。一拍の間を於いて。
ブリッツ「ああ。気付いているだろうな」

ブリッツ、煙草に火を着ける。
アルタイル「そこまで気付いていて尚、余と共に歩もうとするのが、......なんだか、可笑しくてね」
ブリッツ「君の脆さが、放っておけない」

アルタイル、幽かに笑う。
アルタイル「余は、脆いか?」
ブリッツ「ああ、脆いだろう。触れば脆く崩れそうな程にか弱い。アリステリアの様な者には絶対に理解が出来ない、そういった類いの弱さだ」

表情から険は消え、次の言葉に耳を傾けようとしているアルタイル。
ブリッツ「弱者である事を捨て去らなければ、己も他者も救えん。だが君は、その始まりから『弱き者』として生まれた」
ブリッツ「弱き者と共に歩み、弱き事を認め、弱さにかりそめの強さを与えるだけの存在だ。だからこそ強い。だが結局誰も救えないし──君も救うつもりはないだろう。滅びる為に生まれた王国の様な物だ」

アルタイル、目を瞑り囁く様に語る。
アルタイル「......流石『追跡者』だ」
ブリッツ「そういう境遇の子を見るとな。俺は無性に守ってやりたくなる訳だよ。理屈じゃない」
アルタイル「あるさ。その理屈が君の娘御にまつわるものである事は、余も承知しているよ」

立ち上がるアルタイル。その顔は普通の少女の様だ。
アルタイル「だからこそ──だからこそ君は、最終決戦に望むべきではないと思う」

ブリッツ、片眉を上げて。
ブリッツ「『軍服の姫君』、今更仲間はずれもないだろう」
アルタイル「仲間はずれではない。保険だ。それに──......」

アルタイルが立ち上がる。
アルタイル「まだ世界が有るうちに、望むなら『造物主』と逢うべきだ。そして、運命を決めるといい」

僅かに遠い目をして、何もない空間を眺めるアルタイル。
アルタイル「余には望むべくもない事だ。どれだけ焦がれても叶わない。でも君には、それが出来る。神の前で復讐を望むもいい、心情を吐露するもいい。総ては自由だ」
アルタイル「そういった自由は、いつでも大事にすべきだよ、ブリッツ。余はそう思うんだ。いつでも望む時に、望むカードが揃っている訳ではないからね」

ブリッツ、煙草を銜えたまま俯いて静かに佇む。表情は暗く見えないが、ただ眼鏡だけが白く反射して光っている。
ブリッツ「──その時が、来たらな」
アルタイル「君らしくないな。刻限はもう、決まっている」


197/片手を翳すとモニタの幾つかが空間に現れ、その中に呪術的な文様が浮かび上がる。少し驚くブリッツ。
ブリッツ「知らなかった。こんな事も出来るのか、君は」

アルタイルは首を振る。詰まらなさそうに、当たり前の様な事を口にする様に呟く。
アルタイル「余という存在は無限だ。私自身ですら知らない能力が、こうして日々付加され続けている」
アルタイル「世界に余を描こうという者の居る限り、私の能力は増殖し続けるんだよ、ブリッツ」

その文様が幾つかの図象となって眼前に広がる。
アルタイル「──例えば、これだ」

その文様の一つを指差す。
アルタイル「これは余の陣営の色を示している......操縦士はまだ逡巡し、妖憑きは最初から、目標を決めているだろう」

騎士のカードは色が変わっている。道化師と同じ色合いに染まっている。目を細めるアルタイル。
アルタイル「......騎士殿は道化師と繋がる。成る程カードであれば、実に面白い」

黙ってそれを見つめるブリッツ。
アルタイル「──しかし道化師が陣営につく事は、ありえないな。奴は選択をしない。責任も負わない。ただ虚偽だけの属性だ。騎士殿も無駄足だな。さて──」

別の陣営のカード文様を指差すアルタイル。少女の様な表情から再び険のある危険な笑みに戻るアルタイル。
アルタイル「この能力のお陰で──無論まだ霧の中ではあるが、魔導師が如何なる謀を企まんとしているのかは、大筋掴めた」
アルタイル「余の推量が的を得ていたなら、余の立ち振る舞いにも選択の余地が出て来る、そう言う訳だ」
ブリッツ、「どう対処する?」
アルタイル「先程も言ったろう、ブリッツ。余は無限であり、また無謬だ。奴らの策謀が如何に浅慮であるか、悟る機会は与えられるべきだと思う」

アルタイルの目に再び、危険な気配の光が灯る。
アルタイル「自らの愚昧(ぐまい)さに自覚的でない者を只すり潰してみた所で、そこに果たして意味が生まれるだろうか? それは只の殺戮だ。懲罰とはなり得ない。原因と結果の連続性に気付かせ、精神の死をも正しく与えてやらないと、余の行為もまた無価値となる。それは余にとって、存在の意義にかかわる程の苦痛なんだ」

その独白を静かに聴いているブリッツ。再び目の前の魔法陣、モニターを見て指で弾くアルタイル。
アルタイル「......話を戻そう」
アルタイル「奴の謀(はかりごと)が成就すれば、我々がこの世界に干渉出来る機会は失われる。君は奴らの思惑に囚われず、只ひたすらに『神』を追え。シナリオなどではない、己の為に」

ブリッツは愛銃をホルスターから抜き、静かに捧げ持つ。
ブリッツ「済まんな」
アルタイル「君の密かな望みくらい、余にも解っていたさ。君は余に答えてくれた。ならば、余も君に答えなければ」
ブリッツ「──再び逢えるかね、君に?」

アルタイルは優しく微笑む。
アルタイル「総てが余の思うままに進めば......もう、逢えないだろうね」

ブリッツは握手を求めようと手を出す。それを握らずブリッツを引き寄せ、抱きしめるアルタイル。
アルタイル「娘御の為に歩まん事を。この世界の忌まわしい神などではない、貴方の娘御にこそ祈るよ、ブリッツ」

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