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レクリエイターズ ネイキッド

8 august

8月2日

8月2日

   

203/隣の女湯、露天。
まりね「あの声、中乃鐘さんですかね」

セレジア、湯煙の中を露天へ入る。呆れた様に。
セレジア「いい歳してこんな所で騒いで、あいつら。子供か」

岩にもたれかかって、ぐんにゃりしている駿河。
駿河「あづい」
まりね「駿河さん、お風呂苦手ですか」
駿河「にがで。ぎらい」

ひかゆが嬉しそうに言う。
ひかゆ「温泉なんて久しぶりです~。林間学校で一度来たっきりで」

まりねが極めてナチュラルに返答してしまう。
まりね「あ、それ、まさゆき君と初めてむす」

慌ててまりねの口を塞ぐセレジア。話題を変えようとする。
セレジア「そそ、そう言えばひかゆちゃん、大西と打ち合せした?」

ひかゆ、それを聞くと顔を少し曇らせる。
ひかゆ「ああ、はい、したは......したんですけど、そのう......」
ひかゆ「......本当に、あれでうまくいくのか......自信、ありません」

セレジア、肩を竦めて。
セレジア「ま、ああ見えても作者だから。あなたの事は解ってると思うわ」

不安そうに、少し涙ぐむひかゆ。
ひかゆ「そう......ですかねえ」

いつの間にか露天に入り、首まで浸かったメテオラがぼそりという。
メテオラ「だいじょぶ。信じて」

まりね、メテオラの姿に気付かずびくっとして飛び退く。
まりね「うわびっくりした! いつの間に来たんですか? 声、掛けてくれれば良かったのに」
駿河と対照的に、顔をほんのり上気させている程度で熱いお湯にも全くのぼせる気配がないメテオラ。
メテオラ「そっと驚かせようと思っていた。人生にサプライズは大事」

ぶくぶくと口元まで沈みながら。
メテオラ「私もプロットを読んだけれど。大西らしい転換の仕方で感心した」
セレジア「大西、人格には問題あるけどね」
メテオラ「同意だけれど、こういう業種の場合、人格と能力はあまり比例しない」
ひかゆ「......うう、わたし、どうなってしまうんでしょう」

ひかゆの肩を親しげに抱いて語りかけるセレジア。
セレジア「大丈夫よ。私達も全力でサポートするからさ、元気出して。まさゆき君の所、早く戻りたいでしょう?」

ひかゆ、その名前を聞いて、ぐっとこぶしを握る。
ひかゆ「はっ、はい!」
セレジア「もうすぐだから。──わたしも、カロンの所に戻らなきゃ、いけないしね」

そう言いながら湯をすくって流す。露天なので風が吹き抜け、セレジアの前髪を揺らす。

セレジア「ああ」

空を仰ぐ。陽はすっかり落ちて、空に星が瞬く。
セレジア「この匂いを楽しめるのも、これが最後なのかもね」
メテオラ「本当に、香しい。季節も風も土地も、光さえも独特の馨香(きょうこう)を持っている」
セレジア「そうね。潮の香りに、木の香り。この湯気の香りもそうだし、月の光だってそう」
メテオラ「重層的というのは、こんなにも豊かなのかと思う」

まりねが鼻をすんすんとならして、薫りを嗅ごうとする。
まりね「私達、あまり気にもしてなかったですけど。そう言われると改めて、そんな気がしますね」
メテオラ「私達はレイヤーの薄い世界から来たから、より圧倒的に感じるのでしょう。でも、未だその素晴らしさに胸が打たれる」

セレジア、遠い目をして空を仰ぐ。
セレジア「あいつは......アルタイルは──ここを美しいと思ったりは、しなかったのかしら」
メテオラ「彼女は」

少し湯に沈んで呟く。
メテオラ「──......全ての始まりから目的の為、極限に掣肘(せいちゅう)された存在として創造された。彼女は、この世界の豊潤さに気付ける様な、精神的余地を残していない」


同じ様に回りの光景を見遣るメテオラ。湯気が静かに立ち上り、それを柔らかな風が吹き流していく。
メテオラ「......彼女は、追い詰められ怯えた者と変わらない。世界の美しさを振り返る余裕など、どこにもない。残念だけれど、そう言う事」
セレジア「そっか。......そうよね」

メテオラ、真面目な顔になり、決意を瞳に宿す。
メテオラ「彼女がどうであれ、私達は駒を進めるしかない。そして私達は持てる時間で、持てる駒を確実に進めた」

そう言ったあと、少し顔を曇らすメテオラ。
メテオラ「──とは言え、築城院と正体不明の駆動体。それに追い切れなかった人物。あれらをシナリオに組み込めなかったのが、未だに悔やまれる」
セレジア「仕方ないわよ。逃した『被造物』に関しちゃ、アルタイルの得点ってこと。もう、あきらめるしかないわ」

メテオラとは裏腹に、さばさばとした口調で言うセレジア。
セレジア「それに築城院の奴に関しては、作者も殺されちゃったし。あれを誰かが無理矢理引継いだ所で、結局『承認力』は得られなかっただろうしね」
メテオラ「そういった外的要因も『承認力』の形成に含まれる。それがこのルールの難しい所」

また肩まで沈むメテオラ。
メテオラ「とはいえ。状況が最終段階に入った事は、揺るがし様のない事実。ここから先は、天佑を頼むしかない」

メテオラ、それを言ってから空を仰ぎ、広がる夜空に目を移す。
メテオラ「──そう。天佑は──神は結局、これを見守り、裁定する人々」

月が煌々と露天の湯気を照らす。雲が流れる。
駿河「あーだめ。ウチもう出ます」

ぐったりしている駿河、のそのそと露天から上がろうとする。
メテオラ「駿河」

呼び止められて半身を出したまま、止まる駿河。
メテオラ「あなたのパートも読んだ。フェスの直後に開示されるシナリオ」
メテオラ「貴女は、あれで本当にいいのですか」

後ろを向いたまま、少し考える様な仕草を見せる駿河。
駿河「今さっき、作者はキャラクターの事が解ってる、言うとったやん、あんたら」

ざば、と上がる駿河。先程までの、のぼせたけだるい表情は普段の茫洋とした、それでもどこか真面目な顔にとって変わられている。
駿河「ならウチは──そうするしか、ないねん」

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