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8 august

8月19日

8月19日

   

245/控え室。再びブリッツと駿河の会話。
ブリッツ「──君が我が世界の『造物主』である事は、今更どうでもいい話だ。私のいた場所が、この世界の娯楽の為に作られている事も然り」
ブリッツ「世界など、押し並べて悪い冗談の様なものだ。そう考えれば、私の世界も君の世界も、大した違いはない。そうだろう? 神様」
駿河「そうかも知れへんね」
ブリッツ「──ただし」
ブリッツ「それでは済まされない事もある。神である君にはつまらぬ問題かも知れんが──ただ一抹の塵芥(じんかい)にとっても、決して許せぬ物はある」

ブリッツ、ブーツの足が一歩を踏み出す。
ブリッツ「君が企み、君が全てのシナリオを書いた。責は当然、君にある。だから訊きたい」
ブリッツ「──何故」
駿河「『娘はあんな死に方をしなければならなかったのか』」
ブリッツ「娘はあんな死に方をしなければならなかったのか」

再び声がハモる。

二人はにらみ合う。
駿河「......ウチの答えは一つしかあれへん」

ブリッツから目を逸らさずに、真っすぐに目を見て話す駿河。
駿河「あれで話が、おもろくなったやろ?」

ブリッツが素早く銃を抜き、一発発砲する。駿河の腹に命中し、駿河はもんどりうって椅子から転げ落ちる。硝煙の立ち上る銃を手に険しい顔で呟くブリッツ。
ブリッツ「外道が」

ブリッツ、銃を構えながら倒れ込んだ駿河に近づく。
ブリッツ「貴様は神だろう。慈悲の余地もないのか」

血を吐きながら、腹を押さえて呻く駿河。
駿河「......ウチが何の為にあんたの世界を描いたと思う? あんたに安息を与えるためかい。ちゃうわ阿呆。読んでる客の為や」
駿河「おもろなるんなら、いくらでも不幸を描く。人だって殺す。世界だってひっくり返すわ」
ブリッツ「だろうな。神は神でも、貴様は邪神だ」
駿河「ヒドい言様やな......おのれのとこのアルタイルも、世界を壊そうとしとるんやろが。ウチと大して変わらんやんけ」
ブリッツ「動機と理想は重要だ。少なくとも彼女の『造物主』は忠を尽くすに値する人物だと思うがね。貴様と違って」

吐き捨てる様に言う駿河。
駿河「よう言うわ。おのれの手前勝手な復讐をキャラクターにやらすなんぞ、ほんま物書きかい。そんなん物語ちゃうわ、ただの演説ぶった落書きやんけ」
ブリッツ「貴様は、いわば成功者だ。そう言う人物に、彼女の屈辱は解らんよ」
駿河「ブリッツ、呆れさせんなや。ウチの描いたあんたは、そんな腑抜けた事言うキャラちゃうで」

ぐぐ、と震えながら起き上がる駿河。
駿河「最初から成功してた人間なんぞおるか、このボケ。どんだけきつい夜があったと思う。あんたを捻り出すまでに、どれだけ腹の底から泣いたと思うてんのや。舐めた事言わんとけ」

駿河が険しい顔になる。痛みではなく、憤りに表情を歪めている。
駿河「ここ来てからもな、ウチはな」
駿河「まりねさんいう絵描き屋さんの達者なとこ見させられて、ああ、まだ足りへんのかいと思うた。彼女に使えん思われたくないさかい、必死で描いとったわ。どこまで行ってもそうや。堪らんわ。そういうんを全部飲み込んで、今日のここまで来とんのや」
駿河「そんでも──ましなもんが出来れば、おもろいもんが出来よったら、そんな事の全部がなんでもええようになんねや。ほんま業が深いわ」
ブリッツ「私には計り知れんよ。こんな子供じみた事に血道を上げる君たちの事は到底理解出来ん。君等はある種の狂人だ」

銃をもう一度構えて、駿河の頭に向ける。
ブリッツ「──さて。私はこれから、君の頭を吹き飛ばす。そして集っているであろう、対抗者達を探し出して皆殺しにする。今なら戦力の殆どはあっちにいるからね、私一人でも充分だ。それから──この会場内で出来うる限り暴れ、隔絶された場所で闘う私の友人に微力ながら力を貸す」

眉を上げて、駿河に語るブリッツ。
ブリッツ「どうかね。神の君の目から見ても、なかなか愉快なシナリオじゃあないかね?」

駿河「ああ」

ふっと小馬鹿にする様に笑う駿河。
駿河「そんな一本調子のシナリオ、どこがおもろいねん」
ブリッツ「なかなか胸の空くシナリオだと思うのだが」
駿河「うちならこうするわ──『あんたを動揺させて、娘の為にアルタイルを倒す事を決意させる』。そうなる方が、おもろいやんけ」

鼻で笑うブリッツ。
ブリッツ「娘の為に倒すべきは、どう考えても君だ」

苦しげに首を振る駿河。苦しい息の下から、笑う。
駿河「いや、ウチが正しい。なんせ、神様やからな」

突然控え室のドアが蝶番の爆発とともに吹き飛ぶ。

振り向いて銃を構えるブリッツ。

左右に分かれ部屋内に飛び込む自衛隊特殊作戦群の隊員達。全員が素早く銃を構える。対峙して動けない両者。

駿河は困った様に笑う。
駿河「来るの遅いやん......撃たれてもうたわ」

隊員達の間から、おずおずと歩み出る、少女のつま先。

その少女を見て言葉を失うブリッツ。
ブリッツ「エ、リナ」
駿河「ブリッツ。さっきウチ、何て言った?」

隊員の間に立つその少女は、エリナだ。
エリナ「......パパ」
駿河「ウチは、あんたの神様や」

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