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9 september

9月11日

9月11日

   

346/CIC、菊地原が驚愕して見つめる。フェス会場でも、静まり返ってその会場内を見つめる聴衆。
菊地原「彼女は」

メテオラが、肩で息を切りながら声を絞り出す。
メテオラ「そう。アルタイルを創作した──彼女の『造物主』」
松原「『シマザキ・セツナ』だ」

颯太を見遣り。
メテオラ「喪われた彼女の記憶を元に、彼が『創作』したキャラクター。──でも、まさか」
メテオラ「キャラクターだけではなく、彼女を取り巻く世界全てを再創造し、現界させるなんて」


347/アルタイル、踏み出したセツナから逃れる様に後じさる。それまでの自信に溢れた、怜悧な表情はまるで嘘の様に掻き消え、混乱と怯えの少女の表情が取って代わっている。
アルタイル「......きたない、ぞ」

サーベルを握るアルタイル。絶叫するアルタイル。
アルタイル「汚いぞ! 汚い! お前達は卑劣だ......お前達は、こんな事を......こんな卑怯な事を!!」

CICの颯太。
颯太「そうだ。こんなやり方で君を追いつめるなんて、卑怯だし、汚いよ。君のいう通りだ。だけど、『物語』なら──」

険しい目付きで、モニターを見つめる颯太。
颯太「許される。君がどうするのか、観客はみんな待っている」


348/狂乱するアルタイルへ、おずおずと声を掛けるセツナ。宥(なだ)めようとしているのか、自身が怯えているのか、それは解らない。
セツナ「......アルタイル」

恐怖に引き攣った目でセツナを見る。それは恐怖だけではなく、彼女を受け入れようとする心と、猜疑の間で引き裂かれている心情の籠った眼差しだ。

アルタイル、セツナから離れようとするかの様に後じさり、サーベルを力なく左右に振る。素人が、犬を追い払う様な仕草だ。
アルタイル「......やめて」
アルタイル「やめて......その声で、余の――......私の、名前を呼ばないで」

アルタイルの表情が混乱から深く沈んだ悲しみへと彩られる。
アルタイル「お願い」

セツナも歩み出した足を止める。少し悲しそうな顔をして。
セツナ「ご、ごめんなさい」
セツナ「私は、あなたの名前を呼べないまま......逝ってしまったから。嬉しくて」
アルタイル、首を振りながら。
アルタイル「ち、ちがう......そんな事言わないで、あなたは......いや、解らない......ちがうの......セツナじゃない......セツナの筈がない...」

アルタイル、サーベルを握って叫ぶ。
アルタイル「あなたは違う! だってセツナは......! だって、セツナは、もういない!!」

セツナは僅かに困惑した様に返答する。
セツナ「──アルタイル」
セツナ「あなたの言う通り、私は確かに死んでしまった。それなのにどうして、私がまたここに立っているのか──私には......わかりません」


349/CIC。固唾を飲んで見守る菊地原、メテオラ、その他の面々。八頭司がぼそりと呟く。
菊地原「彼女......まるで『被造物』には見えません」
中乃鐘「違う......死んだ人は、戻って来ない。だから彼女は、やっぱり『被造物』なんだ、でも──......」
メテオラ「彼女がソウタ殿の創った『セツナ』というキャラクターなのか、それとも現実にいて既に逝去した『セツナ』本人が、この歪んだ理の中、ペンタグラムによって反魂したのか、......あるいは、その橋渡しをした何かが。それは私にも解らない......」

颯太の胸に光るパイライト。
中乃鐘「でも、彼女はシリウスと違う。人形じゃない。颯太くんが僕らの創作物に登場させた『シマザキ・セツナ』を踏まえて、でもその上の造型をされている......」
中乃鐘「あれは、颯太くん」
中乃鐘「君が知ってる、生きてた『シマザキ・セツナ』そのものなんじゃないのか、なあ、颯太くん!」

颯太、頷く。

情報量の少ない、そこまでの造型が成されていないキャラが、生きている人間の様に強く描写をされて現界したことに驚愕を隠せない中乃鐘。
八頭司「あの子がアルタイルをどうするかなんて、誰にも解らない。あの子に筋書きがない以上、俺たちにはもう、制御不能だ!」

固く口を閉じている颯太。

ややあって、口を開く松原。
松原「それは、観客が──いや、物語自身が決める事だ」


350/アルタイルは驚愕して、一歩よろめく。
アルタイル「どうして......だって......嘘......嘘よ......だって、あなたが......ここにいるわけがない、いられるわけがない」

セツナ、首を振って。
セツナ「それは──きっと、奇跡みたいな物だと思います。でも」
セツナ「私は貴女を描いた、確かに私は覚えています。でも私があなたのセツナじゃないって、あなたを騙す為の偽者だってあなたが怒るのなら、私をどうしてくれても構わない。あなたには、そうする資格がある」

アルタイル、震える。サーベルを取り上げようとするが、その手もすぐに力なく降ろされる。
アルタイル「......無理に......決まってるじゃない」

アルタイルの目から涙がこぼれ落ちる。感情が迸る。
アルタイル「無理に決まってるじゃない!!」
アルタイル「私はずっと! 私はずっとあなたに会いたかった! でも、私があなたを知った時、もうあなたは何処にもいなかった!! 私は──」
アルタイル「私に想いの全てを託してくれた事を、痛い程解っていて! あなたがどうして死んでしまったかも知っていて、でも、あなたの為に何も出来なかった事を悔やんで! だから、あなたの為に出来る事をしようとして!」
アルタイル「だから私はここまで来たのよ!! あなたをどうにかなんて、そんな事、出来る訳ないじゃない!!」

サーベルが、がちゃんとホームのアスファルトに落ちる。よろよろと支柱に寄りかかるアルタイル。顔を上げて、セツナを見返す。悲しげな顔が涙に濡れている。
アルタイル「あなたが真っ赤な嘘だったとしても......幻でも、まやかしでも......私には、そんな事、出来ない」

セツナはアルタイルに、もう一歩歩み寄る。

夏の日差しが深くホームに影を作る。日常にしか見えない、静かな光景だ。
セツナ「アルタイルはずっと、私の為に怒ってくれていたよね。......私、すごくうれしいよ。ありがとう」
セツナ「あなたは、そういう人。私が想い描いた通りの人」

アルタイルが俯いて、小さく呟く。
アルタイル「......だって......当然よ......あなたのため、だもの」


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