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9 september

9月13日

9月13日

   

352/アルタイルが歯を食いしばって、突然叫ぶ。
アルタイル「そんなこと、いわないで!」
アルタイル「まるで私があなたの事、なにも解ってないみたいに──そんな言い方は......やめて」

その語気の荒さに、たじろぐセツナ。
セツナ「アルタイル......」

アルタイルは少し傷ついた顔で、セツナを見る。
アルタイル「私は、あなたの呪いなんか受けてないわ。これは、全部私が選んだ事よ、セツナ──だって私は、あなたがどう思って消えていったか全部知っている、他の誰よりも、誰よりもその痛みを知っているから......だって」
アルタイル「──その痛みと引き換えて、私は産まれ落ちたんだもの」
アルタイル「私はあなたの目を通じて、あなたの心を通じて、総てを知った。世界はあなたにとってあまりにも強大で、あまりに自動的で、残酷で。悪意は時に、人が抱えきれない程に大きいから。だからあなたは──......」

そこで言葉を切り、唇を震わせながら呟くアルタイル。
アルタイル「──だから、私はそんな世界を憎んだ。あなたを世界から退場させた物語を憎んだ。こんなにも大きく美しい世界なのに、何故あなたを痛めつける事だけにしか、世界はその姿を見せなかったんだろうと、そう思う度に私のここ(胸を指し)は張り裂けそうになった」
アルタイル「そんな理不尽が、許されていい筈がない。その原因を作った物全てが、あなたを消し去ろうとする程に理不尽であるなら、そんな仕組みを、根こそぎ消し去ってやろうと決めた」

セツナを睨むアルタイル。しかしその顔は、悔しさと憐憫で弱々しい表情だ。
アルタイル「私があなたの復讐をしようと思ったのは呪いでもなんでもないわ。そんな物語が、許せなかったからよ、セツナ」
アルタイル「......だってそんなの──そんなこと──ひどすぎるじゃない」

ひとすじの涙がアルタイルの頬を流れていく。


353/セツナが微笑む。その頬を、同じ様に涙が伝う。
セツナ「そう──あなたは、そういう子なんだよね。あなたを描いたのは私なのに、私よりあなたの方が私のこと、よく知ってる」

日差しが強い。蝉が啼く。
セツナ「私は改めて、そんなあなたを描けて良かったなって、思います」
セツナ「その記憶は、想いは、私はちゃんと覚えてるのです。私にも何故だかまるで解らないけれど、それは本当」

また日が陰り、少し色濃い影がセツナの上に落ちる。消え入りそうな声で呟くアルタイル。
アルタイル「......私は、あなたと共に歩みたかった。あなたの途切れた記憶じゃなく、あなたを時間を共にして、色々な事を知りたかった。あなたの創った物語の中で、ずっと、共に歩んで行きたかった」

その言葉を聞いて、寂しそうに俯くセツナ。
セツナ「そう......ごめんなさい」
セツナ「私は結局──とても弱くって、あなたと一緒に歩める程強くなれなかったから、だから」
アルタイルは、セツナに駆け寄る。セツナの肩を強く抱いて叫ぶアルタイル。
アルタイル「あなたは───弱くなんかないわ!」
アルタイル「あなたが本当に弱かったなら、私を描き出すよりも前に、あなたはとっくに描く事なんて止めてしまっていた、そうでしょう!?」

アルタイルはセツナの手を強く握る。

セツナは少しだけ微笑んで、アルタイルに語りかける。
セツナ「あなたはいつも真剣で、真面目で、立派。私の手を離れてから、あなたは多くの人達の力を得て変わったんですね」
アルタイル「変わってなんか──」

その声を静かに制して笑うセツナ。
セツナ「あなたは確かに、私が創った『アルタイル』。だけど、あなたはもう私だけの『アルタイル』じゃないのです。皆に愛されてもらえたからこそ、あなたは無限の能力を、無敵の力を手に入れられた」

アルタイルは恥ずかしそうに目を伏せる。それはセツナの言葉に照れているのか、それとも、そうなり得なかった自分を恥じているのか、それは解らない。
アルタイル「──私にもし役割があるのなら、それは、悪者よ。主人公じゃないわ。私はその人達もろとも、世界を無に帰そうとしているんだもの」

セツナは首を振って笑う。
セツナ「あなたは悪なのかもしれない。世界を滅ぼす悪者。でもあなたは同時に、弱き者の王様。弱い者の騎士だって。そうやってあなたを見る人が、沢山いたのです」


ブリッツが眉を上げる。何も一言も言わない。


セツナ「正義や、悪なんかじゃないのです。正しいとか、間違ってるとか、でもないです。あなたの意志を、その有り方を、物語として皆は受け入れてくれた。共感してくれたのです。あなたの『森羅万象』は、あなたを創った人達の、そして受け入れてくれた人達が与えた力」

セツナは優しく手を握り、アルタイルに語りかける。
セツナ「私の弱い部分をすくいあげて、とても強い力へ変換してくれる、それがあなたの本当の力なのです。私みたいな、どこかで折れてしまいそうな人達に、この世界でもう一歩だけ進む為の力を、あなたが与えてくれるんです」

アルタイルとセツナは、互いの顔を注視する。アルタイルは自分の存在を初めて、全肯定する境地に達している。

セツナは自分に言い聞かせる様に、訥々と呟く。
セツナ「世界に耐えて、世界を愛して、許せないと思うなら許さなくてもいい、好きになれなくてもいい。でも、そんな世界を全部含めて、もう一度抱きしめるって。それが、きっと──世界を創る事なんだと、私、思うのです。......私は結局、最後までそうすることが、出来なかったけれど」


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